歌川広重画「五十三次名所図会 五十三 草津」(蔦吉版)

所蔵草津市蔵
解説歌川広重が手掛けた「東海道五十三次」もののうち、最後の作品です。描かれている題材は近江八景のひとつ、矢橋港の「矢橋帰帆」です。この矢橋港からは対岸の大津宿の港への渡し船が就航しており、人や物資を運ぶ湖上交通の要衝でした。
ことわざ「急がば回れ」はこの矢橋港の渡し船に由来しています。草津を出て大津へ向かう場合、矢橋港から船に乗ると約2時間半で到着します。船に乗らない陸路の場合は、瀬田橋を経由するため少し回り道になり、約3時間かかります。所要時間でみると少ししか変わりませんが、渡し船を利用した場合、船賃はかかりますが風光明媚な琵琶湖の風景を楽しむことができます。
しかし、渡し船の速度や安全性は天候に作用されるため、急いでいる時こそ、着実な方法をとった方がいいということから「急がば回れ」ということわざが生まれました。もともとは、室町時代の連歌師である宗長が読んだ「武士(もののふ)の 矢橋の船ははやくとも 急がば回れ 瀬田の長橋」という和歌に由来しています。

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