栄養 (文章)

名称かなえいよう (ぶんしょう)
大分類3章 医食同源の知恵
中分類栄養
解説 食品の中にはさまざまな栄養素が含まれ、人々の健康を支えています。人間に必要な栄養素は45~50種類ほどあると言われ、それらは大きく、糖質・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルの5つに分類されます。この他に食物繊維や特殊成分などが健康増進に役立っています。
 栄養素の働きは大きく、生命活動のエネルギー源、体の構成成分の材料、体の調子を整える役割の3つがありますが、成分の組み合わせによってその栄養効果をさらに高めることもできます。
 さて、沖縄の伝統的な食文化、昔ながらの食事には栄養素がバランスよく含まれていることをご存知でしょうか。その特徴をいくつかご紹介します。

(1)野菜
 沖縄の農産物は食物繊維、ビタミン、ミネラルなど、様々な栄養を豊富に含み、なおかつ紫外線の量が多い太陽のもとで育つため、抗酸化力が高い成分に富み、病気や老化の予防に役立ち、健康に良いとされています。
 沖縄ではかつて多くの人々がサツマイモ(甘藷)を主食とし、季節ごとにとれる野菜類や身近な野草・薬草を食卓に取り入れてきました。これらの食材に多く含まれる食物繊維は、余分なコレステロールを体外に排出する作用などがあり、生活習慣病予防や老化防止の観点で重要な栄養素です。また、発がん予防の作用があるビタミンA、ビタミンCが豊富な緑黄色野菜がよく食べられてきたことも特徴です。ほかにも、ゴーヤーや島ラッキョウなどは食欲増進、デークニ(島ダイコン)やパパヤ(野菜パパイアまたは青パパイア)などには消化・吸収を助ける作用など、いろいろな効果が知られています。


(2)良質なたんぱく質
 日常的に豆腐や豚肉、魚、ヤギなどをよく食べることが挙げられます。地域差はありますが、豚肉が家庭でも一般的に食べられるようになったのは戦後以降で、主要なタンパク源は豆腐だったと言っても過言ではありません。沖縄の豆腐は県外の豆腐とは異なり水分が少なく硬いため、タンパク質やミネラル類などの各種栄養素の含量が高くなっています。大豆に含まれるイソフラボンは抗がん作用、更年期障害の改善に効果があるとして注目されています。
 また、豚は昔からタンパク質の貴重な供給源とされ、それにより肉だけでなく足、内臓、血液、皮、骨まで余すことなく活用する巧みな料理が生み出されました。その特徴として、肉は基本的に皮つきのためコラーゲンが豊富に含まれ、良質なゼラチンが摂取できること、豚肉は調理する前に下茹でをして余分な脂肪を取り除くことが挙げられます。このような調理により、独特な旨味ととろりとした食感が得られるとともに、長寿食の一翼を担っています。
 風土、歴史、先人の経験によって培われた調理法や食材の組み合わせ、バランスの良さは、現代の私たちの健康を保つうえでも変わらず重要な工夫・知恵と言えます。


(3)海藻
 海藻類には貴重な脂肪酸(EPA、DPA、DHA)、食物繊維、ミネラルを含むことがわかっており、なおかつ低カロリーで健康的な食事にはもってこいの食材です。海藻の健康への効果にはさまざまなものがあります。血圧を下げ、コレステロールの増加を抑制する作用や、生活習慣病を予防するほかにも、老化の防止、がん予防に効果があります。
 沖縄でよく利用される海藻は、モズク(方言でスヌイ)、ヒトエグサ(アーサ)、ヒジキ、イバラノリ(モーイ)などのほか、陸に生育する藻類の一種ネンジュモ(モーアーサ)、沖縄では採れないコンブ(クーブ)が挙げられます。和え物、酢の物、炒め物、汁物の具など様々な方法で調理されることからも、多種・多量に食べられてきたことがうかがえます。


(4)知恵と工夫の結晶
 栄養豊富な食材や様々な工夫によって編み出された料理の数々は、沖縄の方言で「クスイムン」(薬になるもの)や「ウジニー」(体力の補給)と呼ばれます。こういった滋養があるものを食べたとき、沖縄では「クスイナタン」(薬になった)と言ったり、「クンチがつく」(スタミナがつく)と言ったりします。
疲れがたまった時や風邪をひいたときには、チムシンジなどの「シンジムン」(煎じもの)が作られ、飲まれてきました。特に血をきれいにする効果があるとするものは「チーシマシグスイ」(血を澄ます薬)、体内から悪いものを出し体の不調を整える働きがあるとするものは「サギグスイ」(下げ薬)と呼ばれます。
 栄養のある食事を通して健康を維持する知恵と工夫は、受け継がれてきた沖縄の食文化の結晶といえるでしょう。

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