千葉県浦安町鳥瞰 表

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千葉県浦安町鳥瞰

作成年月日(和暦)昭和06年05月23日
作成年(西暦)1931
作成者・差出人松井哲太郎
形態
資料群名郷土資料館旧蔵文書
文書番号78-2
公開解説表・千葉縣浦安町鳥瞰    
松井天山 画   昭和6年(1931)2月写生・5月20日発行 当館所蔵
本名 松井哲太郎(1869-1947)。東北・関東・静岡での仕事を合わせて、63点の鳥瞰図作品が現在確認されている。千葉県内では、浦安のほか、千葉市・船橋町・市川町など全24点の作品が残っており、各地域の歴史を伝える貴重な資料となっている。
山本周五郎が浦安に滞在していたころに近い時期に描かれたものなので、小説『青べか物語』を読みながらこの鳥瞰図を観察すると、物語の世界を具体的に想像することができ、興味が尽きない。
裏面の一番下に書かれた奥付によると、この鳥瞰図は定価10銭で販売されたものだったことがわかる。



裏・千葉縣浦安町商工庶家案内 (鳥瞰図の裏面)
鳥瞰図の裏面は、商店、旅館、船宿などの名が書かれた宣伝広告になっている。広告料を支払った店が、紹介されているのであろう。真ん中に2軒描かれている建物が、「通船」と呼ばれた蒸気船の発着所。鉄道はもちろん、浦安橋(昭和15年完成)も架かっていなかったこの当時、この蒸気船発着所が現在でいう駅前のような賑わいのある場所であった。多くの人が集まり、活気にあふれていた様子がよくあらわれた図になっている。
『青べか物語』のなかで「釣船屋が多いのが特徴」と記されているように、ここには9軒もの船宿の名が書かれている。そのほか、3軒の旅館と5軒の海水浴場の名も見える。
上部に書かれた「千葉縣浦安町梗槪(こうがい)」という文章を読むと、「釣魚、投網、汐干狩ノ遊客幅湊シ、夏期ニハ海水浴場盛カリ、日々幾千ノ浴客アリ」と、説明されている。漁師町時代の浦安は、「陸の孤島」と言われ、閉鎖的な町であったかのようなイメージが強いが、かつては東京からたくさんの人が「海の遊び」に訪れる観光地であったことがよくわかる。
いちばん下の段に描かれている建物が、周五郎が通った天ぷら屋「天鉄」である。大きく掲載されているところを見ると、支払った広告料も多かったのではないかと思われる。 聞き取りによると(浦安市郷土博物館調査報告第8集「『青べか物語』それぞれの想い」p 66 参照)、天鉄は少し高級な天ぷら屋で、地元の漁師たちが気軽に立ち寄るような店ではなく、東京から来るお客さんで賑わうような店だったという。 
埋め立て後「東京ディズニーリゾート」ができ、今や世界中からの観光客を集める浦安であるが、周五郎が滞在していたころからすでに「観光のまち」としての性格を兼ね備えて栄えてきたのだということに改めて気づかされる資料である。

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