味わい(だし)

名称かなあじわい(だし)
大分類3章 医食同源の知恵
中分類味わい(だし)
解説(1)「アジクーター」は旨味が濃厚なこと
沖縄の料理の代表的な表現のひとつに「アジクーター」という言葉があります。最近は「はっきりとした濃い味付け」という意味で使われることがしばしばありますが、本来は「だしがよく効いたコクのある濃厚な味わい」を意味します。
沖縄の伝統的な料理ではだし、特に豚だしとかつおだしをたくさん使います。イリチー(炒め煮)、ンブシー(野菜と豆腐の味噌炒め煮)などのように、濃厚なだしと調味料を材料にしっかり煮含めて調理するため、具材にだしがよく染みこみます。さらに具材に昆布や干しシイタケといった乾物やカマボコなど、うまみのある食材を豊富に使うことで、複合的なうま味が生み出されます。


(2)「だし」について
現在の沖縄のだしといえば、豚だしとかつおだしです。豚だしは大きな豚の塊肉や豚骨を使い、丁寧にアクを取りながらじっくり煮込んでとります。かつおだしのとり方は、かつお節をたっぷり使って煮出し、濃いだしをつくります。
沖縄のだしの歴史をひも解くと、次のような歴史が見えてきます。冊封使の記録から、鰹節は17世紀後半までには琉球に輸入され、贈答品としても使われていました。本格的な製造は1901(明治34)年以降で、庶民は蒸して日干しした小魚を砕いてだしに用いるなどしていたようです。戦前までは豚だしも日常的ではなく行事にあわせて作られていて、普段の料理には豚脂やアンダカシー(豚のあぶらかす)が用いられました。

(3)豚肉・豚脂のコク
豚肉は、沖縄の伝統的な食文化の代表的な食材のひとつです。多くの料理に幅広く使われ、その旨味が料理にコクを与えます。特に、豚肉の皮や豚足にはコラーゲンが多く含まれるため、下ごしらえにより余分な脂肪を取り除くことで、良質なゼラチンが残り独特な旨味ととろりとした食感が引き出されます。
また、豚脂(ラード)はかつて貴重品とされており、塩や味噌と同じように調味料の役目を果たし、料理の仕上げに少量落としてコクを出していました。

(4)薬味と香辛料
沖縄ではフーチバー(ニシヨモギ)、ビラグヮー(ネギ)、チリビラ(ニラ)、イーチョーバー(ウイキョウ)が一般的な食材として多くの料理で使われますが、これらは独特の香りを持っており、臭み消しや薬味としても利用されます。特にフーチバーはヤギ汁の具とされ、イーチョーバーは魚の臭み消しとして魚汁などに利用されます。
しかし、香辛料はピパーチ(ヒハツモドキ)の他、コーレーグス(キダチトウガラシ)、ショウガ、ニンニクなどが用いられる程度で、あまり使われません。

(5)低塩分
だしをよく効かせ、豚肉・豚脂によってコクを出すと、濃厚な味わいを引き出すことができるため塩分が少なくてすむことも重要なポイントです。その他に、塩漬けの漬物をあまり食べないことや、スーチキー(塩漬けの豚肉)などは塩抜きして塩分を調整してから使うこと、うまみの多いものや独特の味わいを持つ食材を食べることなどの習慣がありました。そのため、一般的に塩分摂取が少ないことも特徴です。

(6)味噌をよく使う
身近な調味料である味噌はかつて各家庭で作られていました。肉や豆腐、野菜を味付けし、調理することが一般的で、味噌汁やンブシーなどの煮物、和え物、酢味噌など用途も幅広いです。ほかにも小さく切った豚肉と味噌を油で炒めて作るアンダンスー(沖縄の油味噌)はおにぎりの具としても人気です。

(7)油脂のバランスをとる
豚肉料理の脇役には昆布などの海藻がよくあいます。また、豚肉と昆布との組み合わせはお互いの味をよく引き立てあい、うまみが凝縮されます。一方、沖縄の魚は脂ののりが少ないため、脂気を補い、魚のにおいを消すためにから揚げにして食べられることが多いです。煮魚は油で炒めてくさみをとってから煮るという工夫もあります。
このように、食材にあわせて油分を巧みに調整する工夫がされてきました。


参考文献
・「日本の食生活全集 沖縄」編集委員会 編『聞き書 沖縄の食事』社団法人 農山漁村文化協会、1988年
・渡邊欣雄・岡野宣勝・佐藤壮広・塩月亮子・宮下克也『沖縄民俗辞典』吉川弘文館、2008年(「だし」項(西村秀三))
・西大八重子『沖縄野菜の本』ビブロス、2002年
・アエラ編集部 編『アエラムック 食生活学がわかる。』朝日新聞社、2000年11月
・松本嘉代子『松本嘉代子のイチから琉球料理~家庭料理の作り方~』(株)タイムス住宅新聞社、2018年

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