白磁面取壷

タイトル(よみ)はくじめんとりつぼ
作家井上萬二 Inoue Manji
制作年1976年
寸法23.0×37.0×37.0cm
員数1
解説 井上萬二は伝統ある磁器の産地有田の窯元に生まれた。しかし日中戦争が激化するなかで井上は職業軍人を夢みる。中学校の中途で海軍飛行予科練習生となり、特攻基地の鹿児島で終戦をむかえた。目的を喪失して有田に戻った井上は、隣家の酒井田柿右衛門窯をのぞくうち、その戦時中も途絶えることのなかった伝統に感銘を受けて、柿右衛門窯の見習い弟子を希望した。
 井上は酒井田柿右衛門と奥川忠右衛門の二人を自らの作陶の目標づけをしてくれた恩人とする。柿右衛門窯で磁器の製法及び成形を勉強し、国の無形文化財にも指定された蹴轆轤技を持つ初代奥川忠右衛門の指導を受けて、その資質を開花させた。また職人的感覚に終始しないためにと佐賀県立窯業試験場に勤務し、後進の研究生の轆轤成形技術の指導にあたりながら、白磁器の成形及び白磁釉の研究に努めた。大学の派遣教授として赴いたアメリカで、自由闊達なやきものの世界に触れた井上は、伝統のない土地での自由な作陶の感覚を、自分の仕事にも持ち込みたいと思ったという。
 白磁はその原料が完成を決定的に左右する。そのため井上は白磁鉱の最高のところだけを単味で用いて、端正さと清冽さがひときわ目立つ、優れて現代的な感覚溢れる白磁を生み出した。「白磁の生命は、清冽な釉調と形状の端正さにあります」と井上は語る。
 本作品の叩きによって形のとられた面取りには力強い張りとあたたかさがある。白磁のその高い完成度を、見事に形でみせている作品である。

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