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焼貫黒茶碗「層冰峨峨」

タイトル(よみ)やきぬきくろちゃわん「そうひょうがが」
作家十五代吉左衛門 樂直入 Kichizaemon XV ・ Raku Jikinyū
制作年1999年
寸法12.3×14.0×14.0cm
員数1
解説 樂焼とは茶の湯のための茶碗という限定された目的をもって始められた焼き物である。茶の湯の大成者千利休の思想的創意をうけて長次郎によって始められた。桃山時代より樂茶碗造りを継承する京都の樂家では初代長次郎、二代常慶、三代道入と代を重ね、現在の十五代樂吉左衞門に至る。
 樂焼の特質を最もよく示す技術は、成形の「手捏(てづく)ね法」と、一碗ずつ焼き上げるという特殊な窯構造の焼成にある。一般的な手ひねり成形の「ひも造り」「輪積法」とは異なり、楽焼では独自の手捏ね成形が用いられる。この成形法は、円盤状に平らに土を叩きの延ばしたものを、両手で周囲から土を締め上げ、立ち上がらせていく。轆轤成形による中心から外に向かう動きとは逆に、樂茶碗では外から中心に向かう形が基本形となり、この成形法によって見込みには内包的な空間が生み出されていく。
 十五代は32歳にして襲名。1983年に初めて個展を催し、当時からすでに自由で個性的な造形性を示す茶碗を作っていた。
 唐代の詩により「層冰峨峨」と銘のつく本作品には、高く険しい厚い氷の様が重ねられた。基本的には半筒型の茶碗だが、その形は大きく歪み、さらに箆(へら)削りが加わっている。緑釉と縦に流れる黒釉とが、焼き貫かれた土膚に効果的なコントラストを与えている。樂家の窯独特の焼貫焼成では、備長炭の焔と灰が直接かかるために、釉掛けを施す作品はほとんどないという。高火度焼成によって焼き締められた土の質感が、作品全体の力強さと緊張感を高めている。

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