無題

タイトル(よみ)むだい
作家滝口和男 Takiguchi Kazuo
制作年1989年
寸法40.0×81.0×27.0cm
員数1
解説 滝口和男は1987年京都市立芸術大学を中退後、その後78年日展に初出品、初入選。1985年日本陶芸展では外務大臣賞、89年第10回日本陶芸展では秩父宮賜杯グランプリを受賞し注目を浴びる。 「無題」と名付けれた本作品は薄く延ばされた1枚の板で空気を包むようにしてつくる。板は5ミリほどの薄さまで叩かれる。5ミリといえども、掌で叩かれた面と、その力で延ばされた面とになり、両面には土のしまりの違いができる。1枚の板が空気を包み込むようにして立体になった時、叩かれた面は内側に、引き延ばされた面は表面になる。内側の土が充分に叩かれて締まった痕跡が表面に伝わり、土をふくらませる工程がなくても内側から押し出された力を感じることとなる。
 成立した滝口の立体は、既に見ることの出来ない内側から造られていたのである。
 本作品は、空洞でない石など他の素材で同じ形態がつくられていたとするならば自立していない。そのかたちからは中が空洞であるために保たれている絶妙なバランスと、そして窯の中で素材の変化に耐えながらも維持されたことで緊張感を感じることとなる。
 前へつきだしたような3本の足は浮遊感を感じさせ、開かれた口がそれを更に強調する。薄い板おこしによる内と外の両面が互いに影響しあう、その瞬間にしか自立しえないかたちを滝口は示した。

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