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WORK83-4

作家森野泰明 Morino Hiroaki
制作年1983年
寸法63.6×57.1×9.8cm
員数1
解説日展の重鎮・森野嘉光の長男として生まれる。1954年京都市立芸術大学工芸科に入学、富本憲吉らに指導をうけ、同窓の柳原睦夫らとグループ「4分の4」を結成。1966年から68年にわたりシカゴ大学の講師として2度の渡米経験を持つ。 シカゴ滞在中の友人と立体構成についての語らいが現在の作風を成すきっかけとなったようである。“立方体があって縮めていくと薄くなり、それを立てると壁になる。”このように造形が自在に変化するイメージは可塑性に富んだ土という素材を熟知した森野らしい発想である。森野はこれを実践に移す。60年代後半から70年代前半にかけて立方体の秀作を作り出し、70年代に入って立方体が縮んだ平たい作品が見られるようになる。80年代に入って見られる衝立のような作品群は、シンプルで「間合い」の良い幾何学的な装飾と、また90年代には全面に色が施され、その上にドロッピングされた装飾の展開とが見られる。
 本作品は今に続く衝立シリーズの作品の初期のもので、黒のスクリーンにあけられた4つの□はそのまま貫通しておらず小さな点へとしぼんで遠近感を表している。2次元に表された3次元の世界。トリック的な遊びの要素と施された装飾の「間」の感覚は日本の伝統的な美意識を感じさせものである。全面に施された黒い顔料の丸く抜かれた部分からは茶色の土肌が見えており、その円も画面からはみ出していて空間の広がりとまた幾何学的な冷たい感じを和らげている。知的な造形の中で、土の持ち味がさらりとうかがえる。

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