釘のaffordance, 感情による

タイトル(よみ)くぎのあふぉーだんす、かんじょうによる
作家新田ひろみ Nitta Hiromi
制作年2005年
寸法8.0×80.0×100.0㎝
員数1
解説新田ひろみは、1974年石川県に生まれる。実家が銭湯だったため、火や窯には親近感があったというが、特に美術・工芸に関わっていたわけではない。家事手伝いをする中で陶磁器の製作現場に立つ偶然の機会を得て、陶芸を自身の表現手段に選んだという。1998年、能登の窯元、案山子窯に勤務するが、2003年に退社、翌年常滑の共栄窯セラミックアートスクール特別研修コースを修了する。その後も制作活動を続け、2005年、第7回国際陶磁器展美濃で審査員特別賞受賞という華々しいデビューを飾った。
本作品のタイトルにある「affordance(アフォーダンス)」とは、アメリカの心理学者J.J.ギブソンが提唱した造語で、「物質、場所、動物、人工物などといった環境の中にある全てのものが、動物(人間)の知覚や行為を促す契機を常に内包している」という認知心理学における新しい概念を指す。作家は、認知科学者ドナルド・A・ノーマンの著書でこの言葉に出会ったという。
作品は、磁器土を高温で焼き立方体に固めた白い釘と、鉄分のある陶土を使った黒い釘とで構成されている。平面に並んだ白い釘のブロックに対し、大中小のブロックを取り巻いて、盛り上がるように撒かれた無数の黒い釘が、浸食してくるかのような迫力を生み出している。「私の場合、釘のaffordanceは内面と外面のギャップを埋めるもの」という作家の言葉が示すように、「釘」という形態を土で象り焼き固めることによって、内包する機能と共に、その機能に関わる自身の感覚をも具象化することに成功しているといえよう。審査員アルネ・オーセより「概念を感じさせる」として高い評価を得ており、明確なコンセプトを持つ新人として今後が期待される作家である。

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