酒器
タイトル(よみ) | しゅき |
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作品名(原題) | SAKE BOTTLE & SAKE CUPS |
作家 | 伊藤秀人 Ito Hidehito |
制作年 | 1998年 |
員数 | 1 |
解説 | 製陶会社に勤める父のもと、多治見市に生まれた伊藤秀人は、高校卒業後、市陶磁器意匠研究所へ進学した。研究所で陶芸の基礎を学んだ伊藤は、卒業後、和陶器会社へ就職した。仕事で大量の陶器を生産することになり、仕事と自身の作品を区別するため、自分の作品を磁器で制作してみると、これが自身の感覚にぴったりしたという。磁器といえば表面に施された釉薬によって、ガラスのような輝きを放つものが多いが、「ピカピカ光るのは苦手」だったので「うっすら光る法はないかと掛けるのが当然の透明釉をやめてみた」そうだ。そして伊藤の代表的なシリーズのひとつである磁器の焼締が作られるようになったのである。磁土は陶土より粒子が粗いため、最初は肌がざらつき不快感が残ったという。磁土の成分を何度も変え、肌がしっとりするようになったのが1997年のことであった。 翌年の国際陶磁器展美濃'98に出品された本作品は、陶磁器デザイン部門の銀賞を受賞した。「焼締の磁器には、模様などをドローイングのように全面に描くとしっくりこない」という作家の意図が、繊細にそして美しく反映されている。この公募展で審査員を務めたフィンランドのティモ・サルパネヴァによれば「完璧な色の取り合わせ、形も優美でチャーミングなことこの上ない」。この言葉に集約されるように、伊藤の作品を一言で評するなら、シンプルでありながら微妙に揺れた形態に、控えめでありながら大きな存在感を示す色彩。器の形態を保っているにもかかわらず、使う側の思惑より、作り手の制作に対する強い志向が見えるのである。この作家としての自意識に加え、「土から広がるイメージもあるし、自分のイメージに近づいてもらうこともある」と語るように、伊藤は土という素材を通して自己のイメージを広げることを明確に意識している作家なのである。 |