平良 大城 ハル子(南部避難) 1 全文

ID1170591
種類記録
大項目証言記録
中項目戦争
小項目住民
細項目南部避難
資料名(別名)平良_大城 ハル子_「子どものキビを奪った日本兵」_1_全文
資料内容同じ人間を殺しあうのが戦争である。我々は日本は強い国という教育を受けてきた。日本は強いから、米軍が沖縄に来る事はないと信じていたが、次第に危険な状態となってきて、ついに10.10空襲(十・十空襲)が始まった。

 我等住民も、隠れる場所を造らねばいかんと言って、防空壕を造り始めた。空襲が来るとその壕の中に入り、空襲が終ると家に来て食糧を集める。だが次第に空襲は激しくなるばかりで、空から爆弾は落ちて来るし、海からは艦砲射撃は撃ち込まれるし、家にいる事も出来ず壕の中の生活となった。家は全部焼かれるし、今で言えばねずみの生活同様に穴の中を出入りする事ばかりだった。それも一時的な事であつて、空襲や艦砲射撃も激しくなるばかりだった。父母が「年寄りはここで死んでも、良いから子供らを連れて早くどこかに避難しなさい」と言ったので子供達を連れて壕を出た。月日も知らないが夏の夕暮れの事で、私達子供も一緒に自分の壕を出た。行くあてもなく、人の行く所へと足を運んだ。戦争は恐ろしいと思った。どことなく歩いていると、道に人が倒れている。見るとその人は弾に当たって死んでいたので、私達は驚くやら怖くなるやらで、身震いしてただ前へ前へと歩いて行く。手や足を破片で切られて、もがいている人もいた。私達は子供も一緒だったので足の踏み場もないところを、無我夢中で歩いた。歩くばかりで、疲れはてた子供達を励ましながら進む。住民は南部へ南部へと進むが、南部のどことも知らずにさまよい歩くばかり。南部ではあっちこっちに人の死体がころがっているので、私は身も心も茫然となって何が何やら分からなくなった。

 ある日のこと、私達と親戚の家族が一緒になって歩いていると、海から艦砲射撃が激しくなって来たので、避難した。避難場所もなくて、私達は子供達も一緒に溝の上に木の葉を置いて身を隠すだけ。ある家族は岩の陰に身を隠したが、その後間もなく艦砲がその近くに落ちた。驚いて子供達も皆抱き合った。その音が止んで避難場所から頭を出して見ると、近くに避難した家族一家が全滅している。また岩陰に避難した家族は子供1人を残して死んでいる。母親が子供を抱いて死んでいる。見ると、親子が血を浴びたようになり、子供が泣きわめいていた。母親は破片が頭に当たって死に、子供は無傷であった。母親が子供を抱いて死んでいる姿を見て何と残酷な事だろうと思った。子供は私たちが一緒に連れて行き別の場所に隠れた。私はその時の事は今でも頭の中に残っており、一生頭の中からはなれない。子供達に水を飲まそうと水を求めて歩き廻った時ある溝に差しかかった。その流れは水と言うより人間の血も一緒に流れた赤い水だった。私は驚いて別の所から水を汲んで来て子供達に飲ませた。腹をすかせているのでキビを1本見つけて子供達に持たせた時、どこから出て来たのか兵隊が「僕にそのキビをくれ、くれなければ殺す」と言った。同じ日本人が、しかも兵隊であるにもかかわらず、子供の食糧として持っているキビをくれなければ殺すと言う。これが日本の兵隊かとつくづく考えさせられた。私はこの事を思うと胸が張りさける思いがする。私達も死ぬ覚悟で弾の中を歩き、今日死ぬか、明日死ぬかの毎日だった。終戦間近のこと、壕の中に別の家族も一緒に隠れていた。そこへ米兵が来て、何か言っている。言葉も分からない私達がうろうろして出ると、銃弾を打ち込まれて別の家族の方が目の前で殺された。何と言う残酷な事だろう。私達もその時に捕虜となり米兵に連行された。今まで見た事もない米兵を見て驚き、私達はこれから連れて行かれて銃殺されるのかと思った。私達の家族や子供等の命も今日までかと覚悟したが、そうでもなく、みな収容所に集められた。私達もその時から収容所生活が始まり、まずは一安心だった。私はこの戦争体験を書く時、頭も茫然となって筆も走らないが、今になれば運良く生き残ったと思う。

 私達住民にとっては戦争を引き起こした人が憎い。だから二度と戦争を起こさない平和な国にしたい。

(1981年1月寄稿)
キーワード一般住民体験談、10.10空襲(十・十空襲)
総体1豊見城村史_第06巻_戦争編_証言
総体2
総体3
出典1豊見城村史 第6巻 戦争編 pp.764-766
出典1リンクhttps://www.city.tomigusuku.lg.jp/kanko_bunka_sports/rekishi_bunkazai/2/1/3254.html
出典2
出典2リンク
出典3
出典3リンク
国名日本
都道府県名沖縄県
市町村豊見城市
平良
市町村2
字2
時代・時期近代_昭和_戦前
近代_昭和_戦中
昭和_戦後_復帰前
年月日(始)
年月日(終)
年代(西暦)
年月日(和暦)(終)
年月日(和暦)(始)
年代(和暦)
始期(年・西暦)
始期(年・和暦)
始期(月)
始期(日)
終期(年・西暦)
終期(年・和暦)
終期(月)
終期(日)
収納分類16行政委員会
収納分類36010606市史編集
収納分類26_01教育委員会_06文化課
収納分類4豊見城村史第6巻戦争編

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