中村宗十郎の菅原道実(福岡県)

法量(幅)㎜504
法量(高さ)㎜358
公開解説 明治14年(1881)1月から新富座で上演された「松梅雪花三吉野」では、「菅原伝授手習鑑」と「義経千本桜」の日替わりで、名優たちが主要な役を演じた。押絵に描かれている「菅原伝授手習鑑」は、平安時代の右大臣・菅原道真流罪事件をもとに、伝説や巷説を取り入れて脚色したものである。物語では、養女・苅屋姫と斉世親王の駆け落ちは道真の謀反であるという、左大臣・藤原時平の讒言により、道真は筑紫国大宰府へと流罪となってしまう。押絵には、三代目中村宗十郎演じる菅原道真が、苅屋姫と別れる場面が描かれており、鮮やかな紫の衣裳が道真の気品の高さを感じさせる。また、この時、中村宗十郎をはじめ、道真を演じる役者たちが、東の宰府と呼ばれる亀戸天神社(現・東京都江東区)へ代参をたてて精進潔斎したという逸話が残っているのも興味深い。
 はめ込み絵は、梅幸(五代目尾上菊五郎の俳号)による「梅」である。梅幸の号にちなんで太宰府天満宮の梅を描いたものだろう。

PageTop