尾上菊五郎の高橋お伝(群馬県)

法量(幅)㎜504
法量(高さ)㎜358
公開解説 明治12年(1879)5月に新富座で幕を開けた「綴合於伝仮名書」は、当時世間を賑わせていた強盗殺人犯・高橋伝を題材にしたもので、五代目尾上菊五郎が主人公お伝(役名は玉橋お伝)を演じた。草津温泉をふりだしに、お伝が横浜、東京と漂流しながら殺人へと至り、裁判で刑に服するという筋立てである。押絵に描かれているのは、酔いつぶれて寝ている七蔵をお伝が金のために殺害する場面で、右手には剃刀を隠し持っている。舞台では、清元の「明烏」だけが流れるなかで無言のままあっさりと殺し、七蔵の死骸を残してお伝は立ち去っていく。
 高橋伝は、明治9年に強盗殺人の罪で逮捕され、12年に死刑に処された人物である。これが日本史上最後の斬首刑であった。凝り性の菊五郎は、役作りのためにお伝が住んでいた近所の人に様子を聞いたり、大道具方の長谷川勘兵衛と共に東京裁判所を傍聴したという。
 はめ込み絵は飯島光峨が描いた「壱等産製糸」。お伝が群馬県の下牧村出身だったことから、群馬県を題材に描かれたものであろう。

PageTop