尾上菊五郎の妲己のお百(秋田県)

法量(幅)㎜504
法量(高さ)㎜358
公開解説 五代目尾上菊五郎が演じる妲己のお百は「名産秋田蕗」の登場人物である。大坂の廻船問屋桑名屋徳兵衛は、小間使いのお百と通じ、妊娠中の女房を責め殺す。その祟りか、火事のために家財を失い、二人は江戸へ逃げていく。しかし、世話になった重兵衛と密通したお百は、徳兵衛を捨てて芸者になる。そのうえ、自分を尋ねてきた徳兵衛をお百は惨殺するのであった。押絵になっているのは、お百が徳兵衛を殺そうと風呂敷から出刃包丁をとり出す場面だろうか。その表情はぞっとするほど冷めている。
 菊五郎がお百を演じたのは、慶応3年(1867)で、四代目市村家橘を名乗っていた頃である。河竹黙阿弥が当時の花形役者・三代目澤村田之助のために「善悪両面児手柏」を書き下したところ、田之助が病気で降板したため、菊五郎が和尚次郎とお百の両方を演じたという。明治6年(1873)には、増補した「御伽草紙百物語」が上演された。「妲己のお百と異名をとり、これまで人を騙したが、しっぽを見せたことはねえ」と啖呵をきる場面が見どころである。

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