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無題

タイトル(よみ)むだい
作品名(原題)Untitled
作家エンリケ・メストレ Enric Mestre
制作年1996年
寸法50.5×107.3×33.5cm
員数2
解説 スペインの個人作家的陶芸制作は、1928年のリョレンス・アルティガスのパリでの個展を以て幕を開け、優れた指導者を得て早いスタートを切った。ミロ、ピカソ、タピエスら画家達による陶芸への熱心な取り組みもあり、スペイン現代陶芸は独自の豊饒な展開を遂げることとなった。
 エンリケ・メストレは絵画・彫刻の基礎を踏まえて、アルティガスから直接陶芸を学んだ世代の作家である。スペイン・ラスターで知られる古窯マニセスを擁するバレンシア県はとりわけ陶芸の盛んな地域であり、メストレはこの地の陶芸の伝統に深く根ざしながら、陶による寡黙で厳粛な造形表現に到達した陶芸家である。 
 60年代後半から70年代初め、彼は独特の描線で加飾された陶板を中心に制作。80年代には平面から次第に、タタラによる建築的な造形空間の構築へと展開する。素材を熟知したメストレが常に行なってきた洞察、即ち陶の造形が抱えもつ「内部と外部」という領域の関係と、彼が類い希な繊細さで創出する陶の表面の多様な表情の双方が、この時期になって総合的に表現されるに至る。
 本作品では、2枚の陶壁の関係によって、表と裏・内部と外部・閉鎖と開放といった概念が、化粧土とシャモットによる独特のニュアンスをもった壁面で暗示的に示されている。

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