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W.O.O. 199610
作家 | 森野彰人 Morino Akito |
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制作年 | 1996年 |
寸法 | 169.0×41.0×28.0cm |
員数 | 1 |
解説 | 森野彰人は建築空間における陶芸表現をテーマとして、1993年より壁面に架ける作品「W.O.O.」シリーズを展開している気鋭の作家である。時代を色で看取し、そのイメージを作品に反映する森野の「W.O.O.」は、初期の3年間の「赤の時代」と96年以降の「白の時代」とに大きく分かれる。本作品は白を主題として制作を始めた初年の代表作である。 原始性と現代性が緊張感を持って融合した「赤の時代」を経て、「白の時代」において森野は、現代の建築空間をより明確に意識し、「白い壁面」に作品を展示することを前提として洗練された表現へと向かってきた。本作品はその転換点の一作である。愛知県陶磁資料館の「現代陶芸の若き旗手たち」展、イタリアのファエンツァ国際展に出品し、広く国内外の評価を受けるに至った作品でもあり、作家のみずみずしい感性が、充実した技術に裏打ちされて完成度の高い作品へと結実している。作品の生命線ともいえる掻き落としの描線も緊張感と自在さを備えて美しい。作品の中央部には、白化粧の陶を背に磁器の角型のパーツが整然と配され、主題の色である白が硬軟両面で形象化されている。 成形は全て手びねりである。描線が多いため線同士の交差部分が多くなり、線刻も深くなる。従って色化粧の厚みを増す必要があり、本作品の場合、4色(青・濃青・グレー・緑)各部分それぞれ7回重ねてぬられている。成形に比べ加飾の作業量が圧倒的であるが、掻き落としの即興的な線を起こす行為こそ土の生気を取り戻す作業であるという認識が根底にある。 このように森野は、素材と技法に対する明晰な分析を通じて新たな陶の造形を構築し、さらに作品・人間・建築空間の三者の新たな関係をつくろうとしている。 |