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骨の耳 ’92-14
タイトル(よみ) | ほねのみみ |
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作家 | 重松あゆみ Shigematsu Ayumi |
制作年 | 1992年 |
寸法 | 32.5×34.0×39.0cm |
員数 | 1 |
解説 | 重松あゆみは黒陶に彩色したもの、また黒を含む彩陶による平面的空間構成を経て、1991年から「骨の耳」と題する作品群の発表を起点に、一貫したテーマと手法によって独自の世界を着実に築き上げてきた作家である。 本作品は重松が初期の黒陶から脱し、完全に色化粧による本シリーズを展開し始めた時期に制作された一作であり、色彩・肌理・形ともに重松独自の表現「骨の耳」の誕生を告げるものである。五感を超えた感覚で世界を読みとろうとする重松は、他者に「体の芯の骨で振動を感じ取るような感触で、作品と出会ってほしい」と考えている。手びねりによる成形後、色化粧して最も重要な磨きの作業に入る。磨きは黒陶以来、重松にとって欠かせぬ手法で、彼女は磨くことによってしか出せない触覚的な表情を追求している。光沢を出したい部分には油を塗って更に磨いている。こうした磨きへのこだわりも本作品が制作された92年ごろから明確になり、御浜の石を専用の石と定めて現在に至っている。造形の工程での土と手の触感を重視し、一連の磨きによる陶の表面の微妙なニュアンスを低火度焼成によって固定させている。手びねりと色化粧のプロセスにおいて、触覚的表現を深化させながら自己の内的イメージを作品に定着している。 制作作業上の触感を重視する重松の陶の形は、無機物と有機物の両義性を有する造形物が詩情豊かな色彩をまとうといった極めて特異な作品として結実している。色化粧による新たな表現を拓いた点を含め、重松作品が内包する現代的意義は大きい。 |