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極秘諸国城図

資料名(ヨミ)ゴクヒショコクシロズ
大分類歴史
中分類絵図・地図
小分類絵図
時代・時期近世
成立年代(終)元禄5年(1692)
解説収載絵図:
江戸始図、今江戸図、摂州大坂、山城二條、山城淀、和州高取、勢州桑名、勢州長嶋、勢州亀山、志州鳥羽、尾州犬山、三州岡崎、参州吉田、参州苅屋、遠州浜松、遠江横須賀城、駿州田中、甲府城、武州忍城、武蔵岩付之城、下総佐倉、下総関宿、常州笠間、江州膳所、濃州大垣ノ図、濃州加納、信州飯山、信州小室、信州松代、信州松本、信州上田、信州小室、信州高嶋、上野前橋、奥州会津城、奥州白川、奥州岩城、羽州山形城図、羽州鶴ケ岡、越前福井、越前丸岡之城、越後高田、越後長岡、越中富山、丹州亀山、丹波福知山、丹州宮津、因州鳥取、播州姫路、作州津山、備前岡山、備後福山、芸州廣島、長州萩、紀州和歌山、阿波徳嶋、讃州高松、予州今張、筑前福岡、豊前中津、豊後府内、豊後岡城、肥州嶋原、肥州唐津、上総大瀧 古城、小山(遠江)古城、尾州鳴海 古城、大坂 真田丸、岡山 御陣城、茶うす山 御陣城、参州根小屋城図、参州浄古斎、参州宇利古城、泉州岸和田

1.松江歴史館が所蔵するまでの経緯
昭和25~30年(1950~55)の松江城天守解体修理に際し、松江市は城に関する資料の調査・収集を精力的に行っていた。そのような中でこの「極秘諸国城図」は旧藩士の子孫にあたる市民が松江市に対し昭和28年に寄贈したものである。なお寄贈者が「極秘諸国城図」を所有していた理由など詳しい来歴は不明で、今後解明すべき課題である。
 「極秘諸国城図」は松江城本丸内にある松江城山管理事務所が保管していたが、平成23年(2011)年に松江歴史館が開館するにあたり移管された。

2.綴じられた「極秘諸国城図」
松江市は「極秘諸国城図」を受贈した後、厚手の和紙の表紙と裏表紙を加えて、四つ目綴じに改装した。表紙の中央には「極秘諸国城図 七拾四枚」、左側には寄贈者の住所氏名を墨書している。右側には天守解体修理関連資料を松江市が整理した分類番号「絵図第四拾弐号」を朱書きしている。
 この和綴じした中には、「極秘諸国城図」の各図を折り畳んで収納したとみられる袋の一部を台紙に貼ったものがある。この収納袋には次に掲げるとおり墨書が一部残っている。「極秘諸国城図」という名称は、収納袋に見える墨書「極秘諸国城図入」から名付けられたとみられる。
 収納袋にある「元禄五」の墨書から「極秘諸国城図」は元禄5年(1692)以前の製作物だと推定できる。またその文末には「此主/山岡景□」と墨書があり、元禄5年時点での所有者であろう。
 「極秘諸国城図」は、山岡のもとを離れ、松江市への寄贈者が所有していた時点でも、厚手の和紙の表紙と裏表紙で、和綴じの状態で保管されていたとみられる。その表紙には、中央に「城之図」と墨書があり、右下には寄贈者の朱印が押されている。なお左下には「此主 山岡景茂」の付箋が貼られている。この付箋が貼られた時期は不明。また松江市への寄贈者と、山岡との関係も不明である。
 「極秘諸国城図」は、後述のようにもとは各図を個別に折り畳んで収納していたと考えられ、和綴じは後世にとられた処置である。今後の活用に際して、和綴じではノドの部分を傷める可能性があることから、松江歴史館では和綴じを解いて各図を単体で保管・活用することにした。

3.「極秘諸国城図」各図の形態とその特徴
「極秘諸国城図」は、東北から九州に至る各地の城郭や城下町を描く74舗の絵図群である。
 各図とも平均縦27.4cm、横40.0cm程度の料紙に彩色で描画しており、裏打ちされている。また、各図には10×13cm程度に折り畳んだとみられる折り目がある。
 なお残念なことに、各図の表面には綴られていた城図の通し番号がえんぴつで書かれている。また紙面の端にある文字や絵が途中で切れているものもあり、いくつかの図はどこかの段階で紙端が切断された可能性がある。
 74舗のうち64舗の図の表面には、国名や城名を墨書した付箋が貼られている。そのうち51舗の付箋には「稲信」(12舗)、「古城」(3舗)、「浅三」(1舗「江戸始図」)などが付記されている。なお、付箋が裏面にあったり、付箋が剥落したためか城名の記載がない図や、描かれた城とは異なる城名の付箋を貼る図がある。ちなみに「信州小室」城図は2舗あることから、採録城和は73城となる。
 「極秘諸国城図」に収まる図を国別にみると、信濃国が7舗と最も多く、次いで三河国が6舗、摂津国と武蔵国が4舗である。なお武蔵国4舗のうち2舗は江戸城の図である。また出雲国の城図は含まれていない。
 前述の2舗の江戸城図である慶長12~14年(1607~9)の江戸城を描いたと比定できる「江戸始図」と、明暦3年(1657)の大火後の江戸城を描いたとみられる「今江戸図」は、同じ構図で描かれており、両図を対比するため製作されたと推察される。「極秘諸国城図」にはいくつか筆致の異なる図があるが、同質同大の料紙を用いていることもあり、比較的近い時期に制作された可能性が指摘できる。
参考文献『松江歴史館蔵 極秘諸国城図 図版集』(松江歴史館、2018年)

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