作家名安井仲治 YASUI Nakaji
制作年1935年
(プリント2023年)
技法、素材ゼラチンシルバープリント
寸法43.7×32.5
分野写真(日本)
所蔵作品登録番号JF202400020000
解説長女が入院していた大阪大学病院に見舞った際、敷地内に飼育されていた実験用の犬を写した作品。小さな檻には「食事ヲサスナ」という張り紙があり、内部の暗闇から犬が何か恨めしそうにこちらを見つめている。安井はこのとき出会った犬について、「朝の爽やかな光が檻に輝いてゐて、それはこの犬の眼を一そうあはれに見せてゐたのだ。」と書いている。安井の代表作にはしばしば犬が登場する。犬は愛玩の対象である以上に、無常さや哀れみを感じさせる存在でもあった。1930年代の日本の写真界では、欧米の新即物主義やシュルレアリスムを取り入れた「新興写真」が新たな潮流となっており、これに安井も大いに感化され、重ね焼きやフォトモンタージュなどを使った実験的な表現に取り組んだ。一方で、本作のように特定の動向名では括り難い、被写体の物語を叙情的に表す独自の表現も追求した。

PageTop