海港風景

作家名安井仲治 YASUI Nakaji
制作年1930年
(プリント2023年)
技法、素材ゼラチンシルバープリント
寸法30.0×51.2
分野写真(日本)
所蔵作品登録番号JF202400015000
解説1920年代の写真界では、ソフトフォーカスや印画紙に手作業で顔料を乗せるピグメント技法などを用いて写真を絵画的に仕上げることが主流であった。被写体は里山の風景が一般的で、都市部を生活圏としていた安井も1920年代後半は山村へ出向いて情緒的な田園風景を撮影した。だが1930年代に入ると、欧米の写真動向が日本にも流入し、絵画に追従するのではなく写真固有の表現を追求する「新興写真」と呼ばれる潮流が顕在化した。本作は複数のネガを多重露光によってモンタージュした最初期の作例であり、港湾労働者を中心に大型船舶やクレーンが合成されている。単に労働者を撮るのではなく、重工業を想起させるイメージを重ねることで、産業の発展により様変わりする都市のダイナミクスを表現していると考えられる。「新興写真」の動向が日本で本格的になる前に撮られたものだが、洋雑誌等を通じて欧米の最新の状況を知ることができた安井の作品には、1930年前後からこのような新しい美学の片鱗が見て取れる。

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