N氏の吸い殻

作家名青山悟 AOYAMA Satoru
制作年2023年
技法、素材ミシン刺繍、ポリエステル・オーガンジー/コンクリートプレート/ビデオm4v(USB)
寸法5.0×φ0.8/映像4分3秒
分野彫刻・立体(日本)
所蔵作品登録番号JS202300001000
解説コロナ渦の時期、青山のアトリエと同じ敷地内にあった工場が破産し、社長が行方をくらますという出来事があった。この作品は、その社長が地面に踏み捨てたと思われるタバコの残骸を、ミシンによる刺繍で再現したものである。細かい作業が必要な刺繍という手法で制作されたこの作品からは、身近な出来事から実感された現代社会の労働と生活の現実を、作家自身がその手で掬い上げようとする態度がうかがえる。一方で、誰かの人生に起こった不幸な出来事を、当事者ではない自分が作品に取り上げることに罪悪感を抱いていたという。しかし他人の人生の証や小さな足跡を記録することもできず、自分自身のことについてのみ語る作品を制作することにも罪を感じるのではないか、というジャック・デリダの言葉が、彼をこの作品の制作に向かわせた。

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