白の棺

作家名吉本直子 YOSHIMOTO Naoko
制作年2006年
技法、素材古着の白いシャツ
寸法140.5×139.5×179.0
分野彫刻・立体(日本)
所蔵作品登録番号JS202000020000
解説記憶の中で視覚イメージは薄れていくが、触感はあいまいなまま記憶にとどまる。吉本はそうした記憶と触感との関係を古布という素材を通してたどろうとした。これらのやがて私的なテーマから普遍性を模索し始めた吉本は、白い古着のシャツと出会う。白い古着に残る染みや汚れは、人の生きた痕跡であり、また人生における避けがたい罪や人の弱さを暗示する。さらにその生きた証は死への接近を意味する。何百枚もの白いシャツを圧縮して糊で固めた立体を組み合わせて箱状にした《白の棺》は、タイトルの通り死を連想させるにもかかわらず、内側に向かい合うように伸びる袖や折り重なる襞は、生命感に満ちており、特に左右のブロックから内側に伸びて触れ合う袖には、人と人が互いに存在を求めあい共に生きようとする姿が浮かぶ。一方、一枚一枚のシャツに残る汚れは、作品の全体像の中で白くかき消される。それは、死によって罪や過ちが白く浄化されるイメージとも結びつく。この作品は死へと向かう儚い人生を愛しむように肯定的に表現している。

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