FP201900019000_200209_001, 2020/02/09撮影, Public Domain

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『死について、第一部』

作家名マックス・クリンガー Max KLINGER
制作年1889年(1897年3版)
技法、素材エッチング・アクアチント、紙
寸法62.5×48.5×t4.8
分野版画(海外)
所蔵作品登録番号FP201900019000
解説死について、第一部(作品番号XI)
クリンガーにとって重要なテーマのひとつであった「死」について、真正面から取り上げたものです。最初と最後の葉を除く第2葉から9葉では、日常生活の中で突然襲ってくる死を8つの状況の中に描いています。

第1葉 夜 Night
雲間から月明かりが照らす中、海を臨む庭のベンチに腰掛けた男(クリンガー)は、死について思いをめぐらせています。小路を挟んだ画面右端にはユリの花にとまろうとする一匹の蝶。

第2葉 海の男たち Seilors
上下二つの画面からなります。上の画面では難破した船の乗組員が岩の上に立っており、遠くの二人は大きな亀から急いで逃げようとしているようです。大亀と同じ岩の端に立つ手前の男は、窮地に追い込まれて身動きが取れません。
 下の画面は地獄の光景です。画面左で大鎌を持つ死神に連れられた人間たちは、画面右の両手を広げた悪魔が待つ地獄の入口へと導かれていきます。

第3葉 海 Sea
大しけの海で二本マストの船がいまにも転覆しそうです。よく見ると、「死」の手がマストを引き倒しています。
 外側の枠はイソギンチャクが生える静かな海底の世界。中央にあるのは下から見た髑髏です。

第4葉 街道 Highway
版画シリーズ番号7『四つの風景』(1883年初版)の第2葉《街道》を改変したものです。道の上に人とその人が担いでいたと思われる籠が横たわっています。その脇の並木の1本が真っ二つに裂けていることから、倒れている人は雷に打たれたということがわかります。この画面を取り囲んでいるのはヘビと死神です。

第5葉 子供 Child
森を望む広い牧草地のベンチで眠る母親あるいは乳母。脇の乳母車からは、子供にかけていたであろう布の一部が地面まで垂れ落ちています。小路の彼方には子供を連れた「死」の後ろ姿。子供は乳母車から落ちて命を落としたのであろう。
 外枠の両側には古代風の女性像、下には太陽と「眠り」の持物でもあるケシの花。

第6葉 ヘロデ Horod
古代ローマ時代のユダヤの王ヘロデは、猜疑心が強く身内を含む多くの人間を殺害したことで知られています。円形闘技場に置かれた階段付きの玉座。その脇にはヘロデ王が両膝を立てて横たわっています。獅子頭の肘掛けにマントを引っかけて転げ落ちたのでしょう。周りの人はただ眺めているだけで何もしようとはしていません。
 縁飾では一人の槍騎兵が中央下部に描かれた王冠を蹴飛ばしています。

第7葉 農夫 Farmer
窪んだ大地を見下ろす畑で鋤を引く二頭の馬。手前の馬は後ろ足をあげてハーネスから逃れようとしています。鋤の脇には蹄で蹴られた農夫が倒れています。
 外枠の上辺にはツバメとヒバリが、両側には小麦が、下辺には人間と動物の死骸が描かれており、下辺から延びる手は地上の農夫を冥界に引き込んでいます。

第8葉 線路の上で On the Rails
山岳地帯を走る鉄道の線路に横たわる骸骨。この骸骨は死神で、両足を組んで左手の指を口にくわえて寝そべりながら汽車が来るのを待っているのです。
 外枠に表された火を吐くヘビが絡みつく捻じれ曲がったレールや様々な形相の顔が、これから起こるできごとを物語っています。

第9葉 貧しい家族 Poor Family
天窓から光が差し込む屋根裏部屋。子供を左腕に抱えた女性が天窓から外を眺めており、部屋の奥には今にも亡くなりそうな老人が椅子に座っています。
 外枠の左側では「死」を表す骸骨が、画面の女性と向き合う形で手を挙げており、下の枠ではシャベルを持った人が墓穴を掘っています。

第10葉 救い主としての死 Death as Savor
白い着物をまとい棕櫚の枝を手にした死神が、画面左から登場してきます。人々は慌てて逃げますが、一人の男だけが死神にひれ伏しています。縁飾りには裸の人物や怪物たちなどが描かれ、画面下の部分には死んだ人が横たわっています。その上の部分には「我らが避けるは死の形にて死にあらず。我らの切なる望みが目指すは死ゆえに」と書かれています。

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