『片方の手袋』
| 作家名 | マックス・クリンガー Max KLINGER |
|---|---|
| 制作年 | 1881年 |
| 技法、素材 | エッチングほか、紙 |
| 寸法 | 44.0×64.3×t1.5 |
| 分野 | 版画(海外) |
| 所蔵作品登録番号 | FP201900014000 |
| 解説 | ローラースケート場で婦人が落とした片方の手袋をめぐって繰り広げられる不条理な幻想を描いた、クリンガーのもっとも有名な版画シリーズです。シュルレアリスムに大きな影響を与えました。 第1葉 場所 Place 上流階級の社交場でもあった屋外のローラースケート場の情景です。左から二番目の黒いハットを被った男性はクリンガー自身。椅子に座っている女性はクリンガーが愛したブラジル人女性です。現実的な情景ではありますが、ガラスに映し出された断片化された風景は、これから起こることへの不安を予兆しているかのようです。 第2葉 行為 Action リンクの上でローラースケートを楽しんでいる情景です。先頭を行くのは二人の紳士に挟まれた婦人、その後ろは一人で滑る婦人、その後ろを滑っていた紳士(クリンガー)は彼女が落とした片方の手袋を拾おうとして手を伸ばしています。現実の情景を表しながらも、傾いて浮遊するような人物たちは非現実の世界にいるように見えます。 第3葉 願望 Wishes 膝を抱えて手に顔を埋める男(クリンガー)。蠟燭とコップが脇の小卓の上に置かれている状況から、男がいるのはベッドの上だということがわかります。その上には拾ってきた手袋。ベッドの向こう側は空想の世界で、山が高く折り重なり、川が流れる谷底に例の女性が立っています。手袋から生えているように見える四本の木には花が咲いており、二人の愛の成就を象徴しているのかもしれません。 第4葉 救助 Rescue 帆を膨らませた舟に乗った男が、大時化の海の中、水面に浮かぶ手袋を取ろうと必死に棒を差し伸べています。 第5葉 凱旋 Triumph 太陽が輝く海の上を二頭の馬車が貝の車を引いて進みます。その貝の中で手綱を握っているのは例の手袋です。馬の蹄は水かきになり、かき分けられた水は葉の装飾へと変容しています。 第6葉 敬意 Homage 海辺の黒い岩の上に打ち上げられた手袋。その岩の両側には燭台が高く伸びており、まるで手袋を祭る祭壇のようです。寄せ来る波の水泡はバラの花に変容し、祭礼的な雰囲気を盛り上げています。 第7葉 不安 Fears 悪夢に取りつかれて壁際のベッドに縮こまる男。その後ろに大きな手袋と月。海の水は蝋燭を消し、今にも男を飲み込まんばかりです。水に浮かぶ異様な物のなかでも手前の禿頭の男は、不気味に伸びてくる二つの手(袋)左手で指さし、寝ている男に注意をうながしているようです。 第8葉 休息 Quiet 大理石の床の上に置かれた鋳鉄製のテーブルには、手袋がうやうやしく置かれています。その背後では手袋がカーテンのように連なって吊られ、床との隙間からは前の画面(不安)にも登場するワニのような怪物が顔を覗かせています。 第9葉 誘拐 Abduction 前の画面(休息)で顔を覗かせていた怪物が羽をもつ龍として現れ、咲き誇る花々の上をくちばしに手袋をくわえて逃げていきます。それを捕まえようとする男の両腕が破れた窓から伸びています。 第10葉 アモル Cupid テーブルの上に置かれた手袋。その上にバラが覆い被さっています。トンボの羽根をつけたアモルは、仕事道具の弓矢を手袋と一緒のテーブルの上に置いたままテーブルの端に腰かけ、振り向きながらいたずらっぽい視線をこちらに向けています。 |
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