道―サイパン島在留邦人玉砕があった崖に続く道 「Scene」シリーズより

作家名米田知子 YONEDA Tomoko
制作年2003(2016)年
技法、素材発色現像方式印画
寸法75.5×96.0
分野写真(日本)
所蔵作品登録番号JF201600019000
解説「Scene」は、過去に歴史的事件が起こった場所の現在の風景を撮影した、米田の代表的シリーズのひとつ。青空のもとに広がる風景は、かつて日本軍とアメリカ軍による戦闘が繰り広げられたサイパン島である。サイパンは日本の民間人が居住している土地で初めての本格的な防衛戦闘の場となった。民間人は戦闘の中を逃げ惑い、日本軍と共に島の北部に追い詰められ、崖から海に飛び込み自決した人々もいた。鑑賞者は作品名により、その事実を知ることになる。目の前の風景の歴史や記憶を理解することで、見ているイメージは変わらないのに、まるで別のものを見ているような感覚に陥る。歴史は、目に見えるモニュメントや建造物だけに現れるものではなく、木々や野原、青空や青い海、身近なあらゆるものに息づいている。米田は「見えるもの」と「見えないもの」を鑑賞者に問い掛け、鑑賞者は性別や年齢、社会的背景などの違いにより異なる見方をし、多様に解釈する。目の前の風景やものを写し取る写真というメディアを用いながら、表に出てきていないものを含めて可視化しようとする米田の作品は、人間が「見る」ということはどういうことなのかを考えさせる。

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