マーラーの眼鏡―交響曲(未完成)第10番の楽譜を見る 「Between Visible and Invisible」シリーズより

作家名米田知子 YONEDA Tomoko
制作年1999年
技法、素材ゼラチン・シルバー・プリント
寸法75.0×75.0
分野写真(日本)
所蔵作品登録番号JF201600016000
解説20世紀の著名人の眼鏡越しに、その人物にまつわる文書や手記などを撮影した「Between Visible and Invisible」は、1990年代から制作が続けられているシリーズである。ここで取り上げられている著名人達には「歴史に大きく翻弄された」という共通点がある。グスタフ・マーラーは、オーストリア帝国下のボヘミアで生まれ、ウィーンで指揮者として地位を確立する一方、作曲家としては自国ではなく当時外国であったドイツで評価された。米田は、彼が実際に使用していた眼鏡越しに楽譜を「見る」ことで、当時の歴史的背景や生活の一部分を垣間見、マーラーの葛藤を表現しようと試みた。病死により第3~第5楽章はスケッチのみ残された交響曲第10番の自筆譜には、作曲中に妻アルマと建築家グロービスとの関係を知ったマーラーの苦悩の言葉が書き込まれている。米田が選んだのは、第4楽章末尾で、「さよなら、私の竪琴!さよなら、さよなら、さよなら、ああ、ああ、ああ」の「さよなら(Leb wol)」にピントが合わされている。

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