箸が透ける鮮度の高いメジ(マグロ)刺身

赤身・白身と、うま味の関連性は?

名称(ヨミ)あかみ、しろみと、うまみのかんれんせいは?
形態赤身の代表はマグロ、白身はマダイやヒラメ、ならば・・・カンパチやハマチ(ブリ)、サーモン、島で釣れる大型魚カマジ(ロウニンアジ)、島でなじみの赤ウルメ(クマササハナムロ、タカサゴなど)はどれにあたるのか???

なお、赤魚(あかうお)や青魚(あおざかな/あおうお)は、前者が比較的深い海域に生息するメヌケと呼ばれる類いやアコウダイなど赤いメバルの総称で、後者は背が青く見える中小型の回遊魚でニシン、アジ、サバ、イワシ、サンマなどで、大型のマグロやカンパチなどは含まないことが多い。釣り人の間では、カンパチ、ブリ、ヒラマサなどをまとめて青物(あおもの)と呼ぶことがある。
概要赤身か白身かは、ヘモグロビン、ミオグロビンの量で決まるとされる。また、一般的にはマグロやカンパチのような回遊魚が赤身とさるが、マダイや島でおなじみの赤ウルメなど、白身の回遊魚も少なくない。また、血合いはいっそうミオグロビンが多いため、濃い色をしている。ミオグロビンは酸素を蓄積し、必要な時に利用できる酸素ボンベのような役割を担っている。一般的には、100グラム中に10ミリグラム以上、ミオグロビンが含まれると赤身とされている。

【赤身の特徴】
マグロ、カツオなどの筋肉は遅筋と呼ばれ、筋肉内に赤い色素タンパク質ミオグロビンが多(おお)いため、持久力を発揮し長時間高速で泳ぐことが可能。そのエネルギー源として、DHAやEPAといった脂質を多く含み、脳や目の栄養となったり血液サラサラなど健康に良いとさるが、反面カロリーは高く、消化に時間がかかる。マグロの肉に含まれるミオグロビン量は、マダイの100倍にも達する。ただし、マグロは通常の回遊時には、赤身よりさらにミオグロビンを多く含む発達した血合い筋を使って泳ぐとされ、乳酸が発生しないため他の魚類より高速で泳ぎ続けることが可能となっている。また、高速遊泳による捕食に特化したサワラやシイラ、アジ科のイケカツオなどは、マグロと同等の赤身となっている。

【白身の特徴】
タイ、ヒラメ、トラフグ、島でおなじみの赤ウルメなどの筋肉は速筋と呼ばれ、普段はじっと待ち伏せするか、ゆっくり遊泳し、採餌や危機回避では瞬発的に高速で泳ぐことができる。刺身にすると透明感のある白や薄いピンクの身が特徴、高タンパクでコラーゲンが多く含み、低脂肪のため消化が早く、幼児や高齢者、ダイエット中の食事に向いているとされる。サーモンは白身ながら筋肉が赤いのは、オキアミなど食べ物にエビ・カニと同じ赤い色素、アスタキサンチンを含んでいるからである。

【赤身と白身の中間の魚】
アジ科のなかでも肉食の大型魚で、ブリ属のカンパチ、ブリ、ヒラマサ、島でなじみのロウニンアジをはじめとしたヒラアジ類やシマアジなどは桃色をした中間筋を持ち、その名のとおり遅筋と速筋の中間の特性をもっている。餌となる小魚などを捕食する際、マグロやカツオのような直線的な加速とは異なり、機敏な加減速やターンなどを繰り返すことが可能となっている。さらに、ブリ属には発達した血合い筋があり、マグロのように持続的な高速回遊が可能となっている。

【赤身と白身はうま味と関係するか?】
魚に含まれるうま味お成分は、おおむねグルタミン酸とイノシン酸の2種からなり、前者はもともと含まれ、後者はアデノシン三リン酸が死後に分解して生成される。グルタミン酸は必ずしも白身魚に多いわけでなく、たとえばマサバはマダイを上回り、あるいはアデノシン三リン酸は総じて赤身の魚に多いものの、たとえば白身であっても回遊性の強いマダイにはマグロ類に匹敵するほど含有している場合もある。それぞれの含有量は、赤身・白身の区別よりよりも、むしろ回遊性や潮流などによって異なる傾向が見受けられる。また、グルタミン酸は死後あまり変化しないが、細胞内のエネルギー貯蔵物質であるアデノシン三リンは分解されイノシン酸へと変化し、死後硬直後10時間くらいで旨味のピークに達するという。食べるタイミングにもよるが、総じてグルタミン酸よりイノシン酸が含まれる場合が多く、グルタミン酸が最も多いとされるサバ類で100グラム中30ミリグラムほどで、アデノシン三リン酸/イノシン酸が最も多いマグロ類では600ミリグラムに達する。

なお、島の沿岸に多いヒラアジ類(ロウニンアジ、カスミアジ、ギンガメアジ、オニヒラアジなど)なども回遊性が強く、アデノシン三リン酸が比較的多く含まれると思われ、マグロなどと同様に寝かせてから食べるとうま味が増すと考えられる。反面、時とともに柔らかくなる。なお、ヒトの味覚は複数の旨味成分が混じり合ったとき、一層美味しいと感じる特徴があるとされる。

【白身でありながら回遊魚の特徴】
前述のとおり、マダイには多くのアデノシン三リン酸を含み、長時間の遊泳、回遊を可能としていると思われ、赤ウルメやアオマツ(アオチビキ)も白身でありながら常に外洋を回遊するため、同様に死後にイノシン酸が生成され、うま味が増すと考えられる。

【私見】
釣り人であり、ヒラスズキやカッポレなど様々な魚を食べてきた筆者の個人的な経験からすると、もっともうま味の濃い魚は、島の浜辺を回遊する白身魚、ツバメコノシロだと思う。その日のうちに食べてもうま味が濃いので、マダイよりもグルタミン酸を多く含むと考えられる。

【参考:野締めと活け締め】
魚を釣りあげたり、網で捕獲したとき、クーラーボックス内などに放置して死なせるのを野締め、脳や神経を刺して絶命させる手法を活け締めという。小魚をその日のうちに食べる場合や、煮る・焼くなど加熱調理する場合は前者で問題ないが、前述のようにうま味を増した刺身を後日食べる場合は、活け締めが必要となる。野締の魚を刺身にすると、身が白くなり張りがなく、ぶよぶよに感じられる。また、血抜きについては、魚種によっては臭みが抜けて食べやすくなったり、あるいはうま味が抜けてしまうこともあるので、好みによって意見は分かれる。

記 文化財保護審議委員 山田文彦

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