略歴・解説

　楠部彌弌は日本の近代陶芸を代表する一人である。1920年には作陶家の集団「赤土」を八木一艸らと立ち上げ、西洋の個人主義にもとづく芸術観をいちはやくやきものの世界へと導入した。1927年に帝展第四部（工芸）が設置されるとそこに作品発表の場を見出し、以降は官展を中心として活躍した。多種多様な技法と釉薬を駆使した質の高い作品を数多く生み出しただけでなく、同時代の近代的な化学的知見にもとづく技法研究により「彩埏」と呼ばれる独自の技法を生み出し、唯一無二の世界観を確立した。
　1962年に日本芸術院会員、1963年に紺綬褒章受章、1978年に文化勲章受章。1984年12月18日に逝去し、従三位に叙せられ、銀杯を下賜される。

1897年　京都市生まれ
1912年　京都市陶磁器試験場附属伝習所に入所
1915年　同所を卒業
1920年　「赤土」の規約を発表
1924年　現代装飾美術・産業美術国際博覧会に《百仏飾壷》を出品、受賞
1926年　日本工芸美術展に《黒絵扁壺》出品、宮内庁買上げ
1927年　第8回帝展に《葡萄文扁壷》を出品、入選。
1933年　第14回帝展に《青華舐瓜文繍文菱花式龍耳花瓶》を出品、特選。
1937年　彩埏技法を生み出す
1939年　第3回文展審査員
1946年　第1回日展審査員
1950年　第6回日展に《静暁花瓶》を出品、文部省買上げ
1953年　若手作陶家集団・青陶会の指導的立場となる。
1954年　《慶夏花瓶》にて日本芸術院賞受賞
1958年　日展評議員となる
1962年　日本芸術院会員となる。日展理事に就任。
1963年　紺綬褒章受章
1965年　山科の清水焼団地に工房を構える
1968年　「楠部彌弌作品集」を刊行
1969年　京都市文化功労者、日展常務理事就任
1972年　毎日芸術賞受賞
1973年　日展顧問就任
1978年　文化勲章受章
1984年　逝去