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春色蜃気楼(二代歌川国貞画)

分類美術工芸
縦(cm)35.30
横(cm)72.70
時代文久二年(1862)八月
西暦1862
作者二代歌川国貞
解説 歌川国貞の作品。三枚で一組になっているので三枚とも購入しないと観賞に適さないという商売上の戦略が秘められている。蛤を拾っている中央の女性の背後に大蛤が気を吐いて作り出した蜃気楼が現れ、人びとを驚かせている様子を描く。本来、蜃気楼は、海上のはるか彼方の水平線に現れ、この当時の絵画にもそのように描かれるものであるが、この作品は、浜辺に浮かび上がっているのが奇妙である。蜃気楼といえば中国風の建物というのがこの当時の絵画作品の上でほぼ共通したものになっており、そのことも奇妙であるが、本作品についても完全に実景を見ずに、当時の蜃気楼についての断片的な情報をもとに描いたことがわかる。因みに国貞は江戸に住んでいた人物である。
 男性の隣の女性の着物が菊模様であったり、男性の帯に葵らしき模様が描かれるなど、文久二年二月の和宮降嫁を考えると、この男女は家茂と和宮を思い起こさせる。ただし、源氏絵(ここでは為永春水の『春色梅児誉美』の美男子丹次郎と彼を取り巻く女性三人)として描くことで筆禍を逃れようとしたともいえる。

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