長興山荘図

作家名小室翠雲
作品名長興山荘図
Title (English)View of Chokosanso Villa
制作年1929年
制作年(元号) 昭和4年
技法・材質紙本墨画淡彩・軸
サイズ(縦) H ㎝ 121.3
サイズ(横) W ㎝ 180.5
作品解説本作品は、小室翠雲の別荘であり画室でもあった「長興山荘」を描いた作品です。
「長興山荘」は、もともとは実業家にして茶人の野崎広太(幻庵)氏の箱根湯本の別荘でした。1916(大正5)年、箱根に避暑に訪れていた翠雲が、そのたたずまいを好み野崎氏に請うて譲り受けたものです。
名の由来の「長興山」は、箱根湯元から小田原に向かう途中にある山で、ふもとには黄檗宗紹太寺があり同寺の寺号でもあります。翠雲は、この別荘の東に見える長興山の景を「何とも言へぬ佳い景だ。是れ即ち我山荘の名の起る所以である」と語っています。そして、1939(昭和14)年に伊豆に新たな別荘を構えるまでの間、翠雲は自らを長興山人と号し、頻繁にこの別荘を訪れ制作に励んでいます。
本図には、自慢の長興山荘を手前に置き、長興山の秋の夕刻の様子を墨と代赭(たいしゃ)によって表しています。画賛ではその様を「帰雲擁樹々聲冷/落日入山々色紅(帰雲は樹を擁し吹く風は冷たくなってきた/落日は山色を紅にして山に入ってゆく)」と述べ、「敢言肥遯傲王公(敢えて言うなら高隠は王公にも傲る)」と、別荘での俗世界を離れた心持ちを王公さえも軽んじてしまうほどであると述べています。
本作品は、秋の山の表情を巧みにとらえ、その時間的な変化を横長の画面に効果的に表わしており、脱俗の境地を尊ぶ南画の世界に、自然の繊細なニュアンスを織り込みながらスケール感あふれる作品を描いた、翠雲画の特長を示す作品です。

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