秋果童子

作家名小杉 放菴(未醒)
作品名秋果童子
作品名(原語) Child with Autumn Fruits
制作年1926年(大15)
制作年(元号) 大15
技法・材質油彩・カンヴァス
サイズ(縦) H ㎝ 71.400000000000006
サイズ(横) W ㎝ 51.5
作品解説今回購入を希望する作品は、1926(大正15)年、第1回聖徳太子奉讃美術展覧会の出品作。  放菴は、はじめ油彩画家としてスタートし、時事や市井の人間の姿をテーマとしているが、《山幸彦》(石橋美術館)、《出関老子》(出光美術館)など次第に神話的な世界や中国やインドの文学世界を題材にした作品を描くようになる。また、東京大学安田講堂壁画では、寓意的な画題を神話的な空間によって装飾的に表わした。1913(大正2)年の渡欧の前後より水墨画を試み始めるが、1930年代以降、墨、筆、紙などから生まれる独特のマチエールを獲得し、日本の神話や物語、歴史上の人物、道釈人物、山水、花鳥などを描いた。油彩画と日本画、漫画と芸術絵・画といった、異なったジャンルに向かうことによって独自の世界を展開した画家といえよう。_x000D_
 本作品は、両手に葡萄を持つ童子が背中をこちらに向け、葡萄を口に運ぶ様子が描かれている。右下には籠に盛られた石榴が豊かな秋の実りを示している。絵の具は全体に薄く塗られているものの色調は繊細で、下地の白色を活かした彩色が施されている。特に童子の身体には、細筆を重ねることにより微妙なニュアンスが表わされている。淡い色彩、陰影のない単純化されたフォルム、簡略化した背景など作者の大正期の油彩画の特長が認められる。さらに、左端には日本画のように落款が書き加えられ、放菴画の特異な一面がうかがえる。作者にとって童子は、イノセントな精神の象徴であり主要な主題の一つである。後年、熊や兎と戯れる金太郎や良寛と遊ぶ子どもたちの姿を描く作品が見られるが、本作品は、童子を描いた作例として早い時期のものと考えられる。自然に抱かれた無垢で自由な精神世界は、放菴が終生求め続けた境地といえよう。

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