《「名前はなんていうんだい」お互い同類で、よく知ってるはずなのに、彼は定規を使って設計図を描いたりしなかったから、路上で分別されて放り出されてしまった。毎日欠かさず誰かがやってきて何か壊していく。「ならば、みんなに聞こえるよう楽譜を拡げておきましょう」、蟋蜂が一匹、泥溝から顔をのぞかせ、自分の鳴き声への返事を待っている。》 《「僕の名前なら知っているだろう」問われて、その場から姿をくらます。どぎまぎ、とっとと畑を直線で突っ切って走ってったら、草叢のあいだの泥溝に落っこちた。汲んできたばかりの水を井戸に注ぐように、向こうから大声で呼ぶ声がする。たぶん目からは涙があふれ、「僕が見えますか、早くしないと目覚めているひとは誰もいなくなってしまう!」》

番号1474
分野油彩等平面
作家名岡﨑乾二郎 オカザキ・ケンジロウ
作品名カナ<「ナマエハナンテイウンダイ
ボクノナマエナラシッテイルダロウッテイル。>
<モイナクナッテシマウ!」>
制作年2004年
寸法縦:180cm 横:130cm
材質アクリル・カンヴァス 2点
解説岡﨑の仕事の中でも高く評価されている絵画のシリーズにおける代表的な作品。一見ランダムに色彩が置かれているようだが、実は数学的ともいえる厳密な呼応関係が筆触の間に張り巡らされており、輪郭、厚み、動勢、色彩などが自在に変調され繰り返される、「対位法」的な絵画となっている。そのため、単独ではなく対をなすことでさらに効果的に見る者を魅了する。なお、本シリーズに添えられる非常に長いタイトルは各作品の物理的な大きさに対応したものであるが、これも作品の一要素となっている。

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