五条三位騎渡井手玉川図

作品名よみごじょうさんみきといでのたまがわず
作品名(欧文)Gojo-no Sanmi Crossing over the Tama River at Ide
作者渡辺広輝
種別日本画
受入番号66
枝番号0
分類番号J-020
員数1幅
形状掛幅装
寸法(cm)93.3×34.5
材質絹本着色
材質英文Color on silk, hanging scroll
制作年(西暦)19世紀前半
制作年(和暦)江戸時代後期
記銘、年紀(右下)「廣輝畫」 朱文方印『』
受入年度(西暦)1980
受入年度(和暦)S55
受入方法藤江喜重氏寄贈
キーワード小杉文庫
解説京都南部の山吹の名所・井手玉川を描いた作品である。
作品名にある五条三位、すなわち藤原俊成が詠んだ「駒とめてなほ水かはん山吹の花の露そふ井手の玉川」(『新古今集』)を題材とした作例であり、本図様は十九世紀に大いに流行した。住吉派などの大和絵師のみならず、江戸狩野派によっても盛んに制作され、俊成が井手玉川を駒に乗って渡る様子が、遠山、松、山吹、従者などとともに描かれている。
本作の図様は、江戸狩野派の画家によって、狩野探幽《井手玉川・大堰川図屏風》(宮内庁三の丸尚蔵館)を規範とし、繰り返し絵画化された。本作は、住吉派のなかで描き継がれた古典図様を用いて制作されていると考えられるが、狩野探信守道《井手玉川図屏風》(当館蔵)など、江戸狩野派の作例とも共通点が認められる。
モチーフを描く筆線は張りがあり、濃彩と淡彩が的確に使い分けられている。山吹や土坡には濃彩が施され、松の樹幹の質感は丁寧に表されている。人物の顔貌は細線によって描き込まれており、従者の顔貌表現はやや俗味を帯びるが、俊成の顔貌は、住吉派の描く顔貌表現をよく受け継いでいる。
広輝は物語絵を得意としたが、本作はその典型的な作例と言える。
幕末狩野派など、他派の作例との比較においても興味深い作品である。

※須藤茂樹「徳島藩御用絵師渡辺広輝考」
  (『阿波・歴史と民衆Ⅲ』徳島地方史研究会創立30周年記念論集 二〇〇〇年

2019年『対立と融和―十九世紀の江戸画壇』リーフレット、p. 43

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