鏽斧

作品名よみさびおの
作品名(欧文)The Rusty Axe
作者山本鼎
種別版画
受入番号593
枝番号0
分類番号P-008
員数1
寸法(cm)15.0×10.0
材質紙、木版
材質英文Woodcut on paper
制作年(西暦)1905
制作年(和暦)明治38
受入年度(西暦)1983
受入年度(和暦)S58
受入方法購入
解説錆びた斧を持つ男伊佐奈が、秘められた思い出の樹木を挟んで妻と言い争う。「伊佐奈は海の人なり、壮年橘の樹蔭に蜑の少女を慕いて戀の敵なるその友を殺せり。されど少女の意は彼に嚮はずして、亡き人の後を逐ひて海に沈みき。伊佐奈はこれより山中にさまよい、迅雷の一夜、端しなくも宿りし家の女と相結ぶに至る。妻の止利といふはこの女なり。海の紀念なる珊瑚と眞珠とは止利が念珠を飾れり。唯橘の實を秘して、私かに門辺に埋めおきぬ。橘は芽ざしてより既に四十年を経たれども、未だ會て花さかず實らず。こはまた宛ら伊佐奈の胸中なり。」(『春鳥集』「鏽斧」よりそして男はなおも秘密を妻に語らぬままに橘の木を詛って倒そうとし、妻に止められる。しかし妻もまた妖鏡から事実を知らされながら嫉妬に満ちた胸中を40年来秘して来た。悲劇のラストシ-ンである。象徴主義の詩人蒲原有明の詩集『春鳥集』の為に制作されたこの作品は、青木繁の原画を山本鼎が木口木版としたもの。青木繁が蒲原を通じて知ったラファエル前派のロマン的な香気を漂わす。挿絵として「詩人と画人のよく一致した例」と言われる本作は、山本鼎の『明星』に寄せた《漁夫》と共に、創作版画の先駆的な作例とされている。

1991年『MUSEUM SELECTION 静岡県立美術館コレクション選110選』、p. 129
1996年『静岡県立美術館コレクション選』、p. 127

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