《冷たいかたちのある即興》のための習作

作品名(欧文)Study for Improvisation with Cold Forms
作者ワシリー・カンディンスキー
受入番号506
枝番号0
分類番号W-007
員数1
形状額装
寸法(cm)33.0×24.0
材質紙、水彩、グワッシュ、鉛筆
材質英文Watercolor, gouache, pencil on paper
制作年(西暦)1914頃
記銘、年紀(左下)ⓚ
受入年度(西暦)1982
受入年度(和暦)S57
受入方法購入
キーワード西洋
解説1987年東京におけるカンディンスキー展で、この作品は1914年の油彩画《冷たいかたちのある即興》(モスクワ、トレチャコフ美術館蔵)のエスキースとして位置付けられている。最初の抽象画の試みのシリーズである《即興》に見られる、早描きのほとばしるような色彩を、確実な形態で制御しようとした時期に制作されたものと考えられる。鉛筆で決められたかたちに対して、透明水彩の忠実な彩色と白のグワッシュによる調子づけがなされている。
2つの大きさの違う弧の少しずらされた組み合わせから、求心的な構図が成り立つ。弧と弧の間隙が青・黄・赤の三原色で埋められる、2つの弧にはそれぞれ細長い形態群が配され、小さい弧に出入りするかたちのほうが、画面斜め方向のダイナミズムを決定的にする。2つの弧はまた、画面左上の小さめの黒い円の一部と呼応して、遠近の感覚を醸し出している。
この頃のカンディンスキーはロシアの街や、人物その他物語的なモティーフを咀嚼し、非対象絵画の領域に入り込んでいた。だが、幾つかの主要なモティーフは完全に姿を消してしまうというわけでもなく、非描写的な色彩や形態の部分と響き合って深い画面空間を形成している。

1996年『静岡県立美術館コレクション選』、p. 34

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