李白観瀑図

作品名よみりはくかんばくず
作品名(欧文)Li Bai Viewing Waterfall
作者福田半香
種別日本画
受入番号498
枝番号0
分類番号J-094
員数1幅
形状掛幅装
寸法(cm)120.7×49.1
材質絹本着色
材質英文Color on silk, hanging scroll
制作年(西暦)1841
制作年(和暦)天保12
記銘、年紀(右上)「辛丑二月下浣写 半香福田佶」 白文方印『福田佶印』 白文方印『福田吉人』 (左下)朱文印『水墨以積習』(遊印)
受入年度(西暦)1982
受入年度(和暦)S57
受入方法購入
キーワード静岡、風景
解説中国・唐代の詩人である李白が大瀑を眺める様子を描いた作品である。
半香の作品は、天保四(一八三三)年、渡辺崋山を訪ねてその画風に学んだとされる時期に当たる、天保年間の山水画に優品が多いと考えられており、本作は、崋山が自刃する天保十二(一八四一)年、自刃の八ヶ月前に描かれていることから、崋山に学んだ半香の代表作として知られている。
本作の空間構成や描かれたモチーフには、文晁一派の山水画らしい特徴が表れており、たとえば汪肇《観瀑図》(プリンストン大学美術館)のような、浙派風の人物の表現と、李士達《秋景山水図》(静嘉堂文庫美術館)の山水描写を組み合わせたような特徴が注目される。本作と汪肇《観瀑図》は、観瀑する高士と周囲の樹木、滝、遠山の位置関係が共通しており、半香は、本作において、浙派風の人物と滝の配置、荒い筆遣いを取り入れている。
その一方で、巨大な主山が画面右側を塞ぎ、岸壁の間を縫うように垂下する滝が前景に滔々と流れ出す画面構成、画面前景の岩塊に密生する樹木の細緻な描き分け、帯状の雲煙が滝の周囲にかかる描写などに注目すると、これらの表現は、李士達《秋景山水図》に通ずるものであることに気づく。
浙派風と文人画風の表現を混ぜ合わせたような本作の画風の淵源にある作品については不詳であるが、一つの作品ではなく、二つ以上の作品を組み合わせて描いている可能性もあろう。
本作の各モチーフには、天保年間の半香画の特徴がよく表れており、繊細な筆致によって描かれているが、福田半香《渓山真楽図》(当館蔵)に比べ、筆致はメリハリが強く、所々荒い。先述のように、参照した浙派作品の筆墨表現に倣っているからであろう。
本作は、文晁周辺で規範とみなされた浙派作品や李士達作品を組み合わせたような特徴が認められる点が重要な意味を持つ。半香は、本作において、いくつかの明清の山水画の構図、空間構成、モチーフなどを組み合わせ、再構成することで、半香らしい山水画に仕立て直すことを試みていると考えられる。
本作は、このような観点からも、天保年間の半香の山水画の到達点を示す作品に位置づけられよう。

※作品解説『福田半香展』(静岡県立美術館 一九八七年)

2019年『対立と融和―十九世紀の江戸画壇』リーフレット、p. 53

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