寿老人図

作品名よみじゅろうじんず
作品名(欧文)Figure of Jurojin
作者狩野芳崖
種別日本画
受入番号494
枝番号0
分類番号J-090
員数1幅
形状掛幅装
寸法(cm)183.2×78.5
材質紙本墨画淡彩
材質英文Ink with slight color on paper, hanging scroll
制作年(西暦)1881 - 1885頃
制作年(和暦)明治14 - 18頃
受入年度(西暦)1982
受入年度(和暦)S57
受入方法購入
備考箱書き「此幅ハ翁ノ島津公爵邸ニ於テ揮毫セラレタル此種ノ図様中最モ優レタル作品ニシテ、昨秋帝室博物館内表慶館ニ催サレタル故フェノロサ氏(明治美術界先覚者)紀念展覧会ニ同氏遺愛品ト共ニ陳列、世ノ賞讃ヲ博セシ逸品トス」 「大正十辛酉年初春 岡倉秋水謹題」 白文方印『岡倉覚平』 朱文方印『秋水』
解説狩野芳崖が寿老人を描いた大幅である。
本作を描く前より、芳崖は雪舟《梅潜寿老図》(東京国立博物館)を基にした翻案作を数点描いており、本作には、雪舟画の様式を学習した成果が活かされているとみなされる。
雪舟の《梅潜寿老図》の模写作品は、十九世紀の江戸狩野派によって数多く制作された。雪舟《梅潜寿老図》と、その模写作品と本作を比較すると、本作の特徴としてまず注目されるのは、その法量である。本作は原本や邦信本と比べて破格の大きさであり、寿老人は実際にそこにいる人物のような大きさに描かれている。
各モチーフは濃墨の太い筆線で表されており、モチーフが画中から飛び出してくるような迫力と力強さが感じられる。雪舟《梅潜寿老図》を模した邦信作品などに代表されるように、幕末狩野派による《梅潜寿老図》の模写作品は、いずれも鮮やかな彩色による作品ばかりであり、本作のように筆線の力強さを強調した作品は無い。その点を勘案すると、《梅潜寿老図》を規範とみなして本作を描く際、芳崖が試みたのは、単にその図様を用いるのではなく、雪舟の力強い筆線に倣い、寿老人を描くことだったのかもしれない。
寿老人の周辺に描かれたモチーフは、いずれも濃墨線によって力強く描かれており、最前景の岩を描く墨線は、サインペンのような黒々とした墨色である。本作には、モチーフを輪郭線でかたどり、力強くその造形を表すことに対する芳崖の関心が看取される。
本作の典拠となる図様は雪舟《梅潜寿老図》であるが、寿老人は、椅子に腰掛け、山水図の描かれた衝立の前に座す姿態に描かれており、維摩図なども参照して制作されていることが指摘されている。寿老人の体から発せられているオーラは、外隈による淡墨で表され、アクの強い顔貌表現が用いられており、寿老人を描くにあたって、芳崖は蔡山の羅漢図なども学習している可能性がうかがわれる。
本作をはじめとする一連の寿老人図の制作は、芳崖晩年における道釈人物画の様式確立にとって重要な意味を有していることが指摘されている。芳崖による雪舟《梅潜寿老図》学習の問題を考えるうえで、幕末狩野派における雪舟学習の延長上に本作を捉え、芳崖の雪舟学習の特質を考察する必要があろう。

※岡倉秋水・本多天城編『狩野芳崖遺墨帖』(西東書房 一九一一年)
 東京美術学校編『芳崖先生遺墨全集 坤』(西東書房 一九二一年)
 山下善也「狩野芳崖筆『寿老人図』に関する考察」
  (「静岡県立美術館紀要」三号 一九八五年)
 影山純夫「雪舟・雪村と狩野太芳崖」(『天開図画』五号 二〇〇四年)
 関根佳織「狩野芳崖筆、明治十年代の寿老人図について―雪舟学習の成果と応用」
  (『美術史論集』一一号 二〇一一年)

2018年『幕末狩野派展』、p. 185より抜粋

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