塑像

作品名よみそぞう
作品名(欧文)Clay Figure
作者野島青茲
種別日本画
受入番号385
枝番号0
分類番号J-081
員数1面
形状額装
寸法(cm)209.0×148.8
材質紙本着色
材質英文Color on paper, framed
制作年(西暦)1952
制作年(和暦)昭和27
発表展第8回日展
開催年1952
受入年度(西暦)1981
受入年度(和暦)S56
受入方法購入
キーワード静岡
解説塑像に取り組むのは彫刻家の佐藤忠良(1912-2011)。モデルを務めるのはのちに舞台美術家として著名になる朝倉摂(1922-2014)で、この頃は日本画家として活動していた。野島青茲は摂を通じて忠良を知り(1)、交際を始めたという。摂のアトリエでの塑像制作に立ち会い、その際のスケッチを元にして描かれたのが、この《塑像》である(2)。
スケッチの様子を写した写真には、背後の壁際に制作中の摂の大作《働く人》(山口県立美術館蔵)の大下絵が確認できる。アトリエ下の道路工事に従事する人々を描くもので、第6回新制作協会展に出品され、のちに上村松園賞を受賞した。気鋭の日本画家として自身の代表作を生み出さんとするそのアトリエにおいて、摂は彫刻のモデルを務める。絵の中の忠良はヽ摂の風格ある姿を表すために手足を大きく動かして格闘する。振り上げ左腕によって顔が見えないことで、一心に塑像と向き合う様子が強調されていよう。ごく近接して向き合うモデルの頭部と塑像は鏡像のようであり、現実の世界を写し取って像に新たな命を吹き込む、彫刻家の仕事の不思議を視覚化するようにも見える。このときの忠良の格闘の成果は、《画家の像》(宮城県美術館蔵)として今日に残されている。
この緊張感ある制作現場を描くにあたり、青茲が重視したのは、佐藤忠良と朝倉摂、そして自分自身という3者が作る空間を構築することだった。画面中央部分には彫刻台と人物2人の脚が前後に並べられて厚みを示し、摂の座るブロック状の腰かけも立体的に表される。一方で背景は、忠良の足元の斜線がかろうじて壁と床の境界を思わせるが、具体的なモチーフは除かれて色を重ねた独特の風合いの平面で処理されており、室内空間の表現は抑制的である。人物まわりにのみ奥行きを作る構成は、画面に対して2人が大きく捉えられることもあって、彫刻家とモデル、それを見る画家という3者の間にのみ緊密な空間を作り出す。身近な人物をモデルとすることの多い野島青茲であるが、ここでは、画家と彫刻家という2人の友人に自分自身を加えた、“3人の制作者”の存在を強調し、それぞれの創造に対するエネルギーが凝縮するような、骨太の画面として仕上げている。
(1).佐藤忠良は、朝倉摂の父・朝倉文雄の東京美術学校における教え子であり、摂とは旧知の間柄。摂をモデルとした塑像制作については、佐藤忠良「モデル」(『つぶれた帽子』日本経済新聞社、1988年、pp.110-112)に記される。
(2).「県内ゆかりの美術家 一作入魂」『静岡新聞』1999年1月24日付

2021年『STORIES ストーリーズ 作品について学芸員(わたしたち)が知っていること』、p. 104

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