山水図

作品名よみさんすいず
作品名(欧文)Landscape
作者福田半香
種別日本画
受入番号380
枝番号0
分類番号J-078
員数1幅
形状掛幅装
寸法(cm)203.5×100.5
材質絹本墨画
材質英文Ink on silk, hanging scroll
制作年(西暦)1850
制作年(和暦)嘉永3
記銘、年紀(右上)「嘉永庚戌九月寫 為九野先生清鑒 半香福田佶」 白文方印『福田佶印』 朱文方印『吉人』
受入年度(西暦)1981
受入年度(和暦)S56
受入方法購入
キーワード風景、静岡
解説半香が嘉永年間に描いた山水画の大幅である。
半香の作品は、《李白観瀑図》(当館蔵)のような、「天保描き」と称される、細緻な筆致と明澄な彩色による謹直な作例が高い評価を得ているが、本作は、水墨のみで描かれた大幅で、天保年間の作例とは異なる特徴を有している。
繊細な色遣いを特徴とする半香の作例には珍しく、筆墨のみで山水が描かれている点が注目される。龍が天高く昇るように聳え立つ主山には、半香による「天保描き」の山水画のような繊細な描写にはない迫力が感じられる。葉脈のように山肌の表面を覆う皴を描く筆致は力強く、伸びやかである。黒々とした墨線によって表された皴は、煩瑣なほどに描き込まれた点苔と相まって、巨大な山を覆い尽くしており、画面に律動感を与えている。林立する松樹は細線によって丁寧に表されており、類似した形態の松樹が繰り返し描かれ、その反復性が強調されることで、画面空間に奥行きや広がりが生み出されている。丁寧に、均質な墨線によって機械的に表された波の描写は、清代の職業画家による作品を参照したことを想像させる。
本作は、董其昌の山水画のように、彩色が排除された山水空間が描き出されているが、そこに高士の姿を描き込んでいるところが半香らしい。
本作は、半香が、繊細な筆遣いや淡彩の色合いが美しく、光と大気の表現を追究し、日本の南画家たちに多大な影響を与えた李士達や盛茂燁などの蘇州の画家による山水画ではなく、明末清初にかけて、董其昌周辺で展開した正統派の山水画様式を継承した清代の職業画家による作品を学び、晩年の山水画様式を完成させた可能性を推察させる大作である。
半香の山水画様式の展開を考えるうえで重要な作品であり、文晁一派の明清画学習の広がりを示す、注目すべき作品と言えよう。

2019年『対立と融和―十九世紀の江戸画壇』リーフレット、p. 54

PageTop