早春山水図(自賛五言二句)

作品名よみそうしゅんさんすいず
作品名(欧文)Landscape of Early Spring
作者鈴木芙蓉
種別日本画
受入番号32
枝番号0
分類番号J-009
員数1幅
形状掛幅装
寸法(cm)97.3×32.9
材質絹本着色
材質英文Color on silk, hanging scroll
制作年(西暦)1802
制作年(和暦)享和2
記銘、年紀(左上)「享和壬戌孟春 芙蓉木雍写」 白文方印『雍』 朱文方印『主干』
受入年度(西暦)1980
受入年度(和暦)S55
受入方法藤江喜重氏寄贈
キーワード小杉文庫、風景
解説早春の山水景観を描いた作品である。画中には芙蓉の自賛「雲霞出海曙 梅柳渡江春」が書されており、画面前景に紅白梅を、中景に柳を描き、詩の内容を絵画化したものとみられる。モチーフは左右両端にジグザグに配され、奥へ、上へと広がる画面空間が表されている。
画面前景に岩塊と梅樹を、中景に樹叢を、遠景になだらかな丘陵を配し、水景を隔てて互い違いに土坡が連なるという本作の構図は、寛政九(一七九七)年の《柳ヶ瀬梅渓図》(個人蔵、※『鈴木芙蓉とその周辺』参考図版)に類似しており、寛政から享和年間にかけて、芙蓉が繰り返し描いたものと考えられる。
注目すべきは、本作の空間構成、モチーフの配置などが、狩野栄信《雪月花図》(板橋区立美術館)右幅と共通している点である。《雪月花図》は栄信法眼時代、享和二~文化十三(一八〇二~一六)年の作品である。両者の関係について、これまでに注目されたことはないが、同時期に類似した画面構成を用いていることは興味深い。
紅白梅、柳をはじめとするモチーフはメリハリのある筆線で表されており、濃墨、淡彩を要所に配することで、奥行きの深い画面空間が生み出されている。本作のモチーフを描く鋭い筆線や濃淡差の大きなメリハリのある筆墨表現は、谷文晁の山水画に通ずるものがある。芙蓉が当時の江戸画壇の諸要素を取り入れて自らの画風を確立したことをうかがい知れる作品である。

※『鈴木芙蓉とその周辺 忘れられた文人画家』(徳島市立徳島城博物館 二〇〇四年)

2019年『対立と融和―十九世紀の江戸画壇』リーフレット、p. 52

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