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東方朔・山水図

作品名よみとうぼうさく・さんすいず
作品名(欧文)Dong Fang Shuo and Landscape
作者狩野晴川院養信
種別日本画
受入番号1725
枝番号0
分類番号J-358
員数3幅対
形状掛幅装
寸法(cm)各106.2×43.3
材質絹本着色
材質英文Color on silk, set of three hanging scrolls
制作年(西暦)1834 - 1846
制作年(和暦)天保5 - 弘化3
記銘、年紀(各幅右下または左下)「晴川院法印養信筆」 白文方印『会心斎』
受入年度(西暦)2020
受入年度(和暦)R2
受入方法購入
キーワード狩野派、風景、人物
解説東方朔に山水図を取り合わせた三幅対形式の作品である。
江戸狩野派にとって、三幅対形式の作品は、大名家の床の間を飾る作品として需要が高く、養信の父・栄信が新様式の確立に注力した分野であった。
本作は養信による三幅対形式の典型的な作例で、中幅に人物図、左右幅に山水図が組み合わされている。
本作のような組み合わせの三幅対作品は、先行作例としては狩野栄信《帝鑑・耕作図》(個人蔵)や狩野栄信《関羽・山水図》(東京国立博物館)などがあり、本作は、そうした栄信画を参照し、その様式を発展させたものと見なされる。
各モチーフは精緻に描き込まれており、鮮やかな彩色と淡く刷かれた金泥が美しく、養信の三幅対作品のなかでも優れた出来栄えの作品である。
本作の右幅、左幅の山水図は、それぞれ宋元の馬遠・夏珪画の図様が典拠である点が注目される。左幅には、伝夏珪《山水図》左幅(東京国立博物館)の図様が反転して用いられている。伝夏珪《山水図》には養信の添帖が附属しており、養信が原本を直接学んだ成果が本作にも反映されていると考えられよう。
伝夏珪《山水図》は、栄信がほぼ同図様の作品を描いており(狩野栄信《春夏山水図》(『松陽庵桑原家愛蔵品売立目録』昭和8年12月18日))、狩野雅信《楼閣遊覧山水図》(個人蔵)の左右幅にも用いられるなど、養信周辺では、夏珪様式の規範的な作品と見なされていた。
右幅には、伝馬遠《山水人物図》(個人蔵)の図様を画面前景に狩野元信《四季真山水》(『金沢市横山家所蔵品入札目録』大正14年9月24日)系統の図様を画面後景に用いている。馬遠画のような緻密な表現を用いた宋元の山水画と元信の細緻な山水画の図様を組み合わせることは、狩野中信《倣狩野元信 山水図》(個人蔵)に通ずる試みと言え、養信周辺において、狩野派の規範となる元信様式が宋元画の様式に連なるものと見なされ、その理解を作品において実践的に示す試みが盛んに行われたことが推定される。
本作に描かれた松や岩の形態、皴の描法などには、馬夏様式の学習成果がうかがわれる。伝夏珪《山水図》と比較すると、本作のモチーフを描く筆線は軽やかで、彩色は鮮やかであり、金泥を多用するなど、養信らしい表現が用いられている。
養信が倣古図制作の成果を生かし、三幅対作品を描いたことがうかがい知れる作品である。

※福士雄也「東方朔・山水図」作品解説『狩野派の世界2009』
  (静岡県立美術館 2009年)
 野田麻美「東方朔・山水図」作品解説『幕末狩野派展』
  (静岡県立美術館 2018年)

2021年『忘れられた江戸絵画史の本流―江戸狩野派の250年/江戸狩野派の古典学習―その基盤と広がり』、p. 56(209)

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