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望嶽図

作品名よみぼうがくず
作品名(欧文)Mt. Fuji
作者平井顕斎
種別日本画
受入番号1652
枝番号0
分類番号J-351
員数1幅
形状掛幅装
寸法(cm)41.3×66.3
材質絹本墨画
材質英文Ink on silk, hanging scroll
制作年(西暦)19世紀半ば
制作年(和暦)江戸時代後期
記銘、年紀(右上)「巨嶂稜層鎮海 涯扶桑堪作上天 梯岩寒六月常 留雪勢似青蓮直過低名刹雲 連清建古虚堂 塵遠老禅栖乗 風吾欲東遊去特 到松原窃羽衣 偈仿雪舟作幷録 仲和詩三谷山樵忱」 白文方印『平忱之印』 朱文方印『欽夫』
受入年度(西暦)2016
受入年度(和暦)H28
受入方法寄贈
キーワード風景、富士山、静岡
解説伝雪舟《富士三保清見寺図》(永青文庫)の図様に倣って描かれた富士山図である。
伝雪舟《富士三保清見寺図》の図様は、狩野栄信周辺でも写されており、江戸狩野派の模本が数多く知られている。狩野派以外の作例としては、杉谷行直(清見寺本)、矢野良勝(島田美術館本)、長谷川雪旦(酬恩庵本)が描いた作品などが知られているが、本作のような、南画家による作例は珍しい。
伝雪舟本や他の作例と本作を比較すると、本作は、船の数を減らすなど、モチーフを省略した狩野栄信《富士三保清見寺図》(富士山世界遺産センター)のような作例に類似しており、富士山のすっきりとした稜線や山頂の描写も栄信《富士三保清見寺図》に近い。文晁周辺において、同時代の江戸狩野派の模本が知られており、顕斎は、それを参照して本作を描いた可能性が高いだろう。
顕斎は、伝雪舟本の図様を整理し、山岳の位置を変更、省略するなどして、空間を広々と表している。富士山の稜線はすっきりとしており、山肌の白さが際立っている。淡墨の滲みによって雲煙を表し、富士山の麓を描かない点は、遠坂文雍《富嶽図》(個人蔵)にも通ずるものがある。山岳の稜線や皴は、所々、顕斎風の表現に置き換えられており、淵源にある雪舟の様式を想起させる表現はほとんど認められない。モチーフの形態は原本に拠りつつ、十九世紀の文晁一派らしい空間構成、筆遣いによって、原本の図様は再構成されている。
古典図様や崋山作品の図様を用いた作品制作を得意とした顕斎らしいアレンジがなされた優品である。

※山下善也「江戸時代における伝雪舟筆《富士三保清見寺図》の受容と変容」
  (『細川コレクション 日本画の精華』静岡県立美術館 一九九二年)
 山下善也「富士三保松原図の図様伝播」
  (『写しの力 創造と継承のマトリクス』思文閣出版、二〇一三年)

2019年『対立と融和―十九世紀の江戸画壇』リーフレット、p. 49

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