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白鷴図

作品名よみはっかんず
作品名(欧文)White-tailed Pheasants
作者狩野探幽
種別日本画
受入番号1297
枝番号0
分類番号J-311
員数1幅
形状掛幅装
寸法(cm)54.2×94.2
材質絹本着色
材質英文Color on silk, hanging scroll
制作年(西暦)1661頃
制作年(和暦)寛文元年頃
記銘、年紀(左下)「探幽法眼筆」 朱文瓢印『守信』
受入年度(西暦)2004
受入年度(和暦)H16
受入方法購入
キーワード狩野派
解説狩野探幽が雌雄の白鷴(はっかん)を描いた作品である。
白鷴は中国南部原産の雉科の尾が長い鳥で、日本でも愛玩され、鑑賞用の鳥として飼育されていた。
探幽は本作以外にも、《四季花鳥図》(永平寺)の秋図の添景モチーフとして白鷴を描き、また、探幽が原本を描いた、本作とは異なる白鷴図が住吉家粉本中にもあり、探幽は繰り返し白鷴を描いたことが知られている。
本作には実物大の白鷴が描かれており、精緻かつ丹念に描かれた雄の白鷴の羽にはわずかに白色が施され、黒いさざ波模様はとりわけ美しい。彩色のグラデーションによって、繊細に重なりあった羽の下にあるふくらみが表されており、白鷴のぬくもりや存在感を感じさせる描写となっている。
本作に描かれた白鷴は中央尾羽根を人為的に切られた飼鳥で、特定の個体を示す色彩情報などが本作に活かされていることが指摘されており、白鷴の迫真的な描写は、探幽の写生に基づいたものであると考えられる。雄の黒々とした腹はわずかに緑色に光るなど、羽根の微妙な色合いを画面上に再現する試みが認められ、実物のつぶさな観察に基づくものと思われる表現が随所に指摘できる。
ただし、そのような写実的表現のみが本作における迫真性を高めているわけではない。雄の羽根の白色は腹の黒色と鮮やかなコントラストを成しており、彩色は視覚的な効果が計算されて用いられている。雄が羽根の美しさを強調するように側面描写されるのに対し、雌は後方で体を捻った姿に描かれ、中心となる雄の存在感を際立たせている。
また、白鷴の精緻な描写とは対照的に、背景の描写は極力抑えられ、主要モチーフである白鷴に焦点を当て、白鷴と背景の描写密度の落差によって、白鷴の描写における迫真性が強調されているのである。このような表現は、探幽が宋元の院体花鳥画を規範とし、花鳥画を描く中で培われたものと考えられる。
探幽が、写生によって得られた情報を生かしつつ、規範となる宋元画の表現を用いて本画を制作していたことを示す作品である。

※安村敏信 作品解説『狩野探幽展』(東京都美術館 二〇〇二年)
 山下善也「狩野探幽と鳥の写生-新収蔵《白鷴図》から」
  (『アマリリス』七八号 二〇〇五年)
 福士雄也 作品解説『狩野派の絵画2009』(静岡県立美術館 二〇〇九年)
 加藤弘子「狩野探幽寫生論-鳥獣と人物を中心に」
  (『国華』一三八六号 二〇一一年)

2016年『徳川の平和 ―250年の美と叡智―』、p. 183

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