/7

富士山図屏風

作品名よみふじさんずびょうぶ
作品名(欧文)Mt. Fuji
作者谷文晁
種別日本画
受入番号1262
枝番号0
分類番号J-299
員数6曲1隻
形状屏風装
寸法(cm)163.1×363.2
材質紙本墨画群青引
材質英文Ink with ultramarine on paper, six-fold screen
制作年(西暦)1835
制作年(和暦)天保6
記銘、年紀(右下) 「文晁筆」  朱文方印『天保乙未文晁畫印』『画學斎印』
受入年度(西暦)2002
受入年度(和暦)H14
受入方法購入
キーワード風景、富士山
解説富士山図を得意とした文晁晩年の大作である。
大画面の中心に富士山を据え、前景には樹叢や漁船が描かれている。モチーフの描写の検討から、本作は特定の場所を描いた富士山図ではない点が指摘されており、《公世探勝図巻》(東京国立博物館)や《相州名勝図帖》(東京国立博物館)のような、写実的な表現によって描かれた富士山図とは異なる特徴を有している。
本作においては、筆墨の多彩な技法を使い分け、富士山を取り巻く大気と光の変化を描き出すことで、富士山を霊峰として表すことに焦点が当てられており、富士山の周囲には、墨のグラデーションによって、自在に変化する雲の動きが表されている。
画面には胡粉が引かれ、山肌の白さが強調されており、富士山の稜線に施された群青は、見る位置によって墨から浮かび上がるように鮮やかな発色を放ち、富士山を見る鑑賞者の視点の位置が変化することによって、光の当たり具合が変わり、山肌の色合いに変化が生まれることを表すようである。
本作の富士山、雲の描写には、千変万化する大気と光に包まれ、多彩な表情を見せる霊峰の美しさを文晁が熟知していたことをうかがわせるものがある。
本作は、寛政年間の文晁の写実的な富士山図とは異なり、富士山を霊峰として描くため、筆墨表現を重視し、大気や光の表現に注力していく文晁晩年の傾向を示す点が注目される。司馬江漢《長沼村富士眺望図》(当館蔵)のような、十九世紀の江戸画壇における富士山図の展開が文晁のそれに与えた影響を考えるうえで注目すべき作品であるのみならず、文晁晩年の実景図の特徴に通ずる表現が看取される点で、重要な作品と言えよう。

※星野鈴「谷文晁筆 富岳図屏風」
  (『国華』一二七三号 二〇〇一年)
 飯田真「谷文晁筆『富士山図屏風』について」
  (『静岡県立美術館研究紀要』一九号 二〇〇三年)
 飯田真「天保期の富士山図・谷文晁筆「富士山図屏風」をめぐって」
  (『アマリリス』九三号 二〇〇九年)
 野田麻美「谷文晁『富士山図屛風』について―文晁晩年の実景表現とのかかわりを中心に」
  (『聚美』一八号 二〇一六年)
 野田麻美 作品解説『美しき庭園画の世界 江戸絵画にみる現実の理想郷』
  (静岡県立美術館 二〇一七年)

2019年『対立と融和―十九世紀の江戸画壇』リーフレット、p. 47

PageTop