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駿河湾富士遠望図

作品名よみするがわんふじえんぼうず
作品名(欧文)Distant View of Mt.Fuji at Suruga Bay
作者司馬江漢
種別日本画
受入番号1224
枝番号0
分類番号J-296
員数1面
形状額装
寸法(cm)36.2×100.9
材質絹本油彩
材質英文Oil on silk, framed
制作年(西暦)1799
制作年(和暦)寛政11
記銘、年紀(右上)「寛政己未夏五月寫於平安城下旅館 東都江漢司馬峻」 朱文「Eerste Zonders in Jan. Kookan」
受入年度(西暦)2000
受入年度(和暦)H12
受入方法須田寛氏寄贈
キーワード風景、富士山
解説司馬江漢が油絵具を用いて描いた富士山図である。
江漢は天明八(一七八八)年、長崎遊学の際に東海道を旅し、その途上で、駿河国の久能寺(現在の鉄舟寺)から眺望した富士山のスケッチを制作した。江漢はその経験を活かし、油彩や水墨によって、さまざまな構図、表現による富士山図を制作した。
本作を描いた寛政十一(一七九九)年、江漢は京坂、紀州に旅行しており、款記から、本作は京都で描かれた作品と分かる。本作の景観描写は、天明八年のスケッチに基づくものと考えられるが、伝雪舟《富士三保清見寺図》(永青文庫)の図様を基にしていることが指摘されている。伝統的な構図を用い、油彩によって描くことで、江漢以前の富士山図の表現を刷新した作例とみなせよう。
本作の構図は、江漢が描いた同図様の作例中でも、とりわけ横長である点が注目され、画面右側に広がる三保松原の景観がポイントとなっている。人物や帆船、田畑が細緻に描き込まれており、樹木の根元には影が表されている。富士山の背景に広がる淡い水色の空には雲がかかり、透き通るように青い海には、柔らかい光が注がれているようである。本作には、実際に富士山を眺望した折に目で見、肌で感じた光や大気を画のなかに描き留めようとする江漢の試みが看取される。
谷文晁は、画業の晩年、富士山図において、光や大気の表現を追究したが、本作には、十九世紀江戸画壇における富士山図のそうした試みに先駆ける表現が認められる。江漢の富士山図の革新性を良く示す作品である。

※成瀬不二雄「司馬江漢の寛政十一年の近畿旅行について」
  (『大和文華』七三号 一九八五年)
 日比野秀男「司馬江漢筆『駿州薩陀山富士遠望図』―江漢における実景と絵画化―」
  (『静岡県立美術館研究紀要』四号 一九八六年) 
 成瀬不二雄 作品解説『司馬江漢 生涯と画業』(八坂書房 一九九五年)
 成瀬不二雄『富士山の絵画史』(中央公論美術出版 二〇〇五年)
 福士雄也 作品解説『富士山の絵画展』(静岡県立美術館 二〇一三年)
 石上充代 作品解説『富士山―信仰と芸術』
  (静岡県立美術館・山梨県立博物館 二〇一五年)

2019年『諸派興隆―十八世紀の江戸画壇』リーフレット、p. 33

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