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百猿図

作品名よみひゃくえんず
作品名(欧文)Hundred Monkeys
作者狩野伊川院栄信
種別日本画
受入番号1170
枝番号0
分類番号J-290
員数1幅
形状掛幅装
寸法(cm)124.2×54.0
材質絹本着色
材質英文Color on silk, hanging scroll
制作年(西暦)1802 - 1816
制作年(和暦)享和2 - 文化13
記銘、年紀(左上)「伊川法眼栄信筆」 朱文方印『伊川法眼』
受入年度(西暦)1998
受入年度(和暦)H10
受入方法購入
解説百匹の猿を描いた、吉祥的な画題の作品である。百猿図は長寿を祈念するもので、百鶴図と対の画題である。
江戸狩野派は百猿図を得意とし、時期の早い作例としては、狩野探信守政《百猿図》(東京国立博物館)、東博本とほぼ同図様の狩野探信守政《百猿図》(《百鶴百猿図》(栃木県立博物館)のうち)が知られている。
二点の探信守政本と本作を比較すると、本作は、樹木、猿、滝や前景の岩の配置など、基本的には探信守政本の図様を用いていると言える。ただし、探信守政本では柏の木のみが描かれていたのに対し、本作においては、柏の木は画面前景に配され、画面の中ほどで枝を左右に伸ばし、枝上には猿がたくさん描かれている。画面上部には崖上に松を描いており、探信守政本では柏一本であった樹木を柏と松に分け、空間の前後、上下を分割することで、奥行きや高低差が強調されている点が注目される。
本作における、画面左端に崖を、最前景に岩を描く構図や、二本の樹木が空間の前後に絡み合うように伸長する描写、画面奥から九十九折のように屈曲し、手前へと流れ出る奔流の表現に注目すると、栄信は、伝夏珪《山水図》(東京国立博物館)左幅のような作品を基に、探信守政本のあっさりとした構図をアレンジしているとみなされる。
画中の猿の毛描きには、細かく繊細な筆致が用いられ、質感やふくらみが表されている。百匹の猿は、毛色だけでなく顔の表情や大きさ、姿態などが丹念に描き分けられており、実に生き生きとしている。とりわけ、手を繋ぐ、柿を掴む、指差すなど、指先の細やかな描写が猿の動きを仔細に表しており、その精緻な表現には目を瞠るものがある。子猿の愛らしい表情や、小禽の生き生きとした姿態にも目を凝らしたい。
本作は、探幽周辺で描かれた規範となる図様に基づきながらも、奥行き豊かな空間構成と細緻な描写によって、栄信らしい作品にアレンジされている点で、栄信画の特徴をよく示す作品とみなせよう。
なお、栄信は、伝夏珪《山水図》とほぼ同図様の狩野栄信《春夏山水》(『松陽庵桑原家愛蔵品売立目録』昭和八年十二月十八日)を描いている。栄信によって翻案作が制作され、本作のような作例にその表現が用いられることによって、伝夏珪《山水図》の図様が規範化された可能性をうかがわせる点においても、本作は興味深い作品と言える。

※山下善也 作品解説『狩野派の世界 静岡県立美術館蔵品図録』
  (静岡県立美術館 一九九九年)
 浦木賢治 作品解説『狩野派と橋本雅邦-そして、近代日本画へ』
  (埼玉県立歴史と民俗の博物館 二〇一三年)
 福士雄也 作品解説『アニマルワールド 美術のなかのどうぶつたち』
  (静岡県立美術館 二〇一四年)

2018年『幕末狩野派展』、p. 161

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