右隻

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竹雀図屏風

作品名よみちくじゃくずびょうぶ
作品名(欧文)Sparrows and Bamboos
作者狩野晴川院養信
種別日本画
受入番号1168
枝番号0
分類番号J-288
員数6曲1双
形状屏風装
寸法(cm)各168.3×370.4
材質紙本金地着色
材質英文Color on gold-leafed paper, a pair of six-fold screens
制作年(西暦)1834 - 1846
制作年(和暦)天保5 - 弘化3
記銘、年紀(右隻右下・左隻左下)「中務卿晴川院法印藤原養信筆」 白文方印『藤原』 
受入年度(西暦)1998
受入年度(和暦)H10
受入方法購入
キーワード狩野派
解説総金地に鮮やかな彩色を用い、竹と雀を描いた華やかな屏風である。
光沢のある濃墨線で輪郭をかたどられた竹には緑青が厚く施されており、笹を描く表現は、狩野栄信《桐松鳳凰図屏風》(当館蔵)のそれを受け継いでいる。
江戸狩野派らしい筆致で描かれた竹とは異なり、九十一羽の雀の描写には、江戸狩野派には珍しい表現が用いられている。雀は黒目が大きく、ぷっくりとした嘴であり、丸々とした姿態が愛らしい。雀の描写だけを見れば、本作の筆者は円山派の画家と判断してしまうかもしれない。円山派の描く雀と比較すると、その表情はやや控えめであるが、淡墨を丁寧に施し、羽の質感が的確に表されるなど、それぞれの雀の表情や姿態を生き生きと描く点が注目される。
本作には、「中務卿晴川院法印藤原養信筆」という仰々しい落款が入れられており、金地の華やかな屏風である点を考慮すると、婚礼調度など、貴顕からの注文であることが推察される。狩野探幽以降、江戸狩野派は吉祥画題をレパートリーの一つとして手がけており、栄信も《百猿図》(当館蔵)のような、吉祥的な要素の強い動物画を描いている。本作もそうした流れのなかに置くことが可能であろう。
また、狩野栄信《桐松鳳凰図屏風》の裏面に《月夜葡萄図屏風》が描かれているように、栄信以降、総金地の吉祥的な画題の屏風が盛んに制作されているなかで、本作のような作品が注文されたと推定される。養信の婚礼調度の代表作である《源氏物語図屏風》(法然寺)の裏面には金地着色の《竹に太湖石、朱垣図》が描かれており、婚礼調度の屏風には、総金地に竹の図が数多く描かれている。
従来、本作は養信の屏風としてはやや特殊な画題、表現とみなされてきたが、婚礼調度との関わりを考えると、養信の他の作品との比較も可能になるように思われる。養信の画風展開を考えるうえで、今後多角的に考察すべき興味深い作例と言える。

※山下善也 作品解説(『狩野派の世界 静岡県立美術館蔵品図録』
  (静岡県立美術館 一九九九年)
 福士雄也 作品解説『アニマルワールド 美術のなかのどうぶつたち』
  (静岡県立美術館 二〇一四年) 
 木下京子「江尸狩野派の源氏絵屏風の展開と両面屏風についての考察」
  (『畫下遊樂二 奥平俊六先生退 職記念論文集』藝華書院 二〇一八年)

2018年『幕末狩野派展』、p. 152

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