1月
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富嶽十二ケ月図巻
作品名よみ | ふがくじゅうにかげつずかん |
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作品名(欧文) | Illustrations for Mt. Fuji of Twelve Months |
作者 | 狩野養川院惟信 |
種別 | 日本画 |
受入番号 | 968 |
枝番号 | 0 |
分類番号 | J-250 |
員数 | 1巻 |
形状 | 巻子装 |
寸法(cm) | 27.4×1083.3 |
材質 | 紙本着色 |
材質英文 | Color on paper, handscroll |
制作年(西暦) | 1781 - 1794 |
制作年(和暦) | 天明1 - 寛政6 |
記銘、年紀 | (巻末)「養川法眼筆」 白文方印『惟信之印』 |
受入年度(西暦) | 1992 |
受入年度(和暦) | H4 |
受入方法 | 購入 |
キーワード | 狩野派、風景、富士山 |
解説 | 十二ヶ月それぞれの風物とともに富士山を描いた作品である。 江戸狩野派においては、狩野探幽《富士山図》(静岡県立美術館)のような、瀟洒淡麗な様式によって描かれた富士山図が規範となっていた。本作に描かれた富士山の表現は、基本的には探幽《富士山図》に拠っているが、富士山を月次絵として描き分ける点に、惟信の創意工夫がある。 本作の各図様には名所絵の影響が看取され、父・狩野典信との合作である狩野典信・狩野惟信《名所図帖》(個人蔵)に類似する図様が見出せる。また、十二ヶ月の富士山の姿を描いた作品は、池大雅《富士十二景図》(東京藝術大学・滴翠美術館)などが知られており、惟信は、富士山を描く新しい表現を反映させて本作を描いたのかもしれない。 本作の見どころは、各図が長短さまざまの長さに描かれており、メリハリのある画面構成を用いている点、季節や天候、時間の移り変わりによって富士山を描き分けている点などにある。たとえば、巻頭の「月に竹梅・茅屋図」は、短い画面に富士山を描き、富士山以外のモチーフの描写を簡略にしている。それに対し、時雨が富士山や茅屋を濡らし、しっとりとした空気が画面に拡がる「五月雨に白鷺図」や、晴れた空に天の川がかかり、麓の七夕飾りの様子が仔細に表された「天の川に七夕飾り図」は、季節感豊かな描写に焦点を当て、画面を横に展開している。また、富士山周囲の雲煙や山容に刷かれた、水彩画のように瑞々しい水色、画面前景の田畑や樹木に施された明澄な緑、藍、白など、カラフルな色遣いによって、四季それぞれの情景が描き分けられている。 惟信は季節感あふれる描写が特徴の作品をいくつも残しており、狩野惟信《戸山荘八景図巻》(徳川美術館)は、本作と数多くの共通点が認められる。本作の特徴である、季節や時間の移り変わりを富士山図のうちに表すことは、谷文晁を中心に、寛政年間以降、十九世紀の江戸画壇で流行した。本作の「武蔵野に満月・落雁図」などは文晁が好んだ富士山図のパターンに通ずるものがあり、惟信の富士山図が関東画壇に影響を与えたことが推察される。 惟信の富士山図のなかでもとりわけ重要な作品である。 ※山下善也 作品解説『狩野派の世界 静岡県立美術館蔵品図録』 (静岡県立美術館 一九九九年) 福士雄也 作品解説『富士山の絵画展』(静岡県立美術館 二〇一三年) 薄田大輔「狩野惟信筆『戸山荘八景図巻』について」 (『金鯱叢書』四三輯 二〇一六年) 松島仁「江戸狩野派の富士山図―メインストリームとしての定型の創生と展開」 (『環境考古学と富士山』一号 二〇一七年) 野田麻美 作品解説『幕末狩野派展』(静岡県立美術館 二〇一八年) 2019年『諸派興隆―十八世紀の江戸画壇』リーフレット、p. 29 |