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連山春色図

作品名よみれんざんしゅんしょくず
作品名(欧文)Landscape in Spring
作者谷文晁
種別日本画
受入番号836
枝番号0
分類番号J-147
員数1幅
形状掛幅装
寸法(cm)154.4×91.3
材質絹本着色
材質英文Color on silk, hanging scroll
制作年(西暦)1797
制作年(和暦)寛政9
記銘、年紀(左上)「寛政丁巳三月寫 文晁」 朱文方印『谷文晁印』 朱文方印『谷氏文晁』
受入年度(西暦)1986
受入年度(和暦)S61
受入方法購入
キーワード風景
解説文晁による山水画の大作である。画面左方には険しい巨山が空を覆うように聳え立ち、山間には山道を行く旅人が描かれている。巨山の右方には霞がかかり、水景が画面奥へと鑑賞者の目を導く。画面前景には樹叢が描かれているが、画面中景にかけて、樹叢は徐々に小さくなる。最前景に描かれる旅人の行く先は果てしなく遠いことを暗示するかのようである。
本作の大観的な構図、鋭い筆墨表現、明るい彩色、モチーフの描写などには、明清の山水画様式がさまざまな形で取り入れられており、大画面を充填するように、モチーフが精緻に描き込まれている。山肌に施された短く鋭い斧劈皴は、浙派の作品を参照したことを推察させるもので、筆遣いはメリハリがあり、山の塊量感を的確に描出している。皴の鋭い筆線に対し、山肌には、明るいオレンジと淡い緑を、グラデーションを用いずに面的に刷いており、カラフルな彩色は、メリハリある筆墨表現と調和することで、険岳の現実離れした壮麗な姿を表している。かかる彩色表現や松葉の細緻な描写などは、清代の職業画家の作品を学んだことを推察させる。
その一方で、田畑などのモチーフの描写や画面奥へと鑑賞者の視線を誘導する樹叢の描き方、随所に旅人を描き込むことで臨場感を生み出す手法などには、《公余探勝図巻》(東京国立博物館)に代表される、寛政年間の文晁による実景図における描写との共通点が認められる。本作は、文晁が規範とみなした中国の山水画学習の成果と、実景図の制作経験が一体となって、幻想的でありながらも迫真的な山水空間が表されている。
寛政年間の文晁の作品は、たとえば《公余探勝図巻》、《浴恩園図》(天理図書館)、《青山園荘図》(出光美術館)など、画巻、画帖に描かれた小画面の実景図に傑作が多く、本作のような、大画面に精緻な筆遣い、色遣いで描かれた山水画の傑作は稀少である。文晁の山水画の革新性を端的に示すと同時に、文晁の確立した山水画様式の持つ総合様式的な側面、規範性を表す作品であり、十八世紀江戸画壇の掉尾を飾るにふさわしい傑作と言えよう。

※福士雄也 作品解説『江戸絵画の楽園』(静岡県立美術館 二〇一二年)
 横尾拓真 作品解説『谷文晁展』(サントリー美術館 二〇一三年)
 伊藤紫織 作品解説『日本美術全集15 浮世絵と江戸の美術』
  (小学館 二〇一四年)

2019年『諸派興隆―十八世紀の江戸画壇』リーフレット、p. 40 をウェブサイト用に修正。

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