右隻
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四季花鳥図屏風
作品名よみ | しきかちょうずびょうぶ |
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作品名(欧文) | Birds and Flowers in Four Seasons |
作者 | 「元信」印 |
種別 | 日本画 |
受入番号 | 834 |
枝番号 | 0 |
分類番号 | J-145 |
員数 | 6曲1双 |
形状 | 屏風装 |
寸法(cm) | 各138.5×269.4 |
材質 | 紙本着色 |
材質英文 | Color on paper, a pair of six-fold screens |
制作年(西暦) | 16世紀中頃 - 後半 |
制作年(和暦) | 室町時代末期 - 桃山時代初期 |
記銘、年紀 | (右隻右下・左隻左下)朱文鼎印『元信』 |
受入年度(西暦) | 1986 |
受入年度(和暦) | S61 |
受入方法 | 購入 |
キーワード | 狩野派、風景 |
解説 | 奥行き深い山水空間に松などの樹木、鶴や小禽などを描き込んだ作品である。 左右隻の両端には、険しい岩が幾重にも奥に連なっており、画面中央の遠景と前景の間に、V字形に水景が表されることで、広大な空間が作り出されている。かかる空間構成は室町時代狩野派の巨匠・狩野元信の山水画にみられる特徴で、本作はそこに花鳥を細やかに描き込む点が珍しい。花鳥画と山水画の境目にある本作は、伝元信画のなかでもとりわけ貴重な作品と言える。 左右隻には「元信」壷印が捺されているが、本作の筆者は元信周辺の画家と見なす説と元信の孫・永徳と見なす説が提示されている。 先行研究が指摘する通り、本作には元信様式、永徳様式双方の特徴が認められるが、左右隻を具に観察すると、右隻には元信様式の、左隻には永徳様式の特徴が顕著であることに気づく。例えば、右隻の小禽、樹葉などの細かいモチーフの精緻な描写、すっきりとしたモチーフのフォルム、鋭い細線を用いた斧劈皴や明澄な岱赭などの色遣いは、元信様式の特徴を示す。一方、左隻の小さいモチーフを太めの筆線で描く表現、煩瑣な波の描写、荒く力強い皴の描き方や、右隻よりも濃い彩色表現などは、永徳様式に通ずる特徴と言える。概して、繊細な表現を用いる右隻は元信様式に、より力強い筆致と鮮やかな彩色を用いる左隻は永徳様式に基づくものと見なされ、左右隻は別々の画家によって描かれたものと考えられる。 元信晩年頃の元信工房には、永徳早期の作例に通ずる要素が認められる作品を残す画家が散見され、本作には、狩野派工房において、元信様式と永徳様式がまじりあい、時代様式が転換してゆく、当時の複雑な様相が読み取れる。 ※武田恒夫「大画面構成にみる山水構成の特例について一初期狩野派の場合一」 『国華』1086号 1985年 辻惟雄「呂健筆崑崙松鶴図解説」『美術史論叢』4号 1988年 (2022年4月1日公開に合わせて執筆) |